*************** 名歌鑑賞 ****************

梅散るや難波の夜の道具市
                  建部巣兆

(うめちるや なにわのよるの どうぐいち)

意味・・かって栄えた人々が生活に窮して手放した
    由緒ある家具・小道具などが、夜の灯を浴
    びて売られている。美しい道具類が、灯火
    にあってますます古めかしくも上品なもの
    に見える。梅の花がはらはらと、売る人、
    買う人、売られる道具の上に散りかかり、
   「商業」というものが、ふと美しく、悲しく
    寂しいものに思われてくる。
 
    華やかな大阪商業都市の道具市の風景です。
    梅の花の散る象徴は、伝統ある家柄の人達
    の没落かも知れない。
       
 注・・難波=大阪。古い歴史の町でり、活況を呈
     する商業都市でもある。
    道具市=古道具をせり売りする市。夜間営
        業が多い。
     梅散るや=仁徳天皇を梅の花によそえて王
             仁 (わに)が詠んだ歌「難波津に咲くやこ
    の花冬ごもり今は春べと咲くやこの花」
    (古今集・仮名序)は、難波に都を置いた
    といわれる仁徳天皇の賛歌である。「今は
    春べと咲いた」梅も、巣兆の句では「散っ
    て」しまう。それは伝統ある家柄の人達の
    没落を象徴しているのかも知れない。
    (難波に梅の花が咲いています。今こそ春
    が来たと梅の花が咲いています)
    冬ごもり=春の枕詞。
作者・・建部巣兆=たけべそうちょう。1761~18
     14。本名山本英親。加舎白雄(かやしらお)
     門。蕪村風の絵も描く。

出典・・句集「曾波河里・そばかり」(尾形仂篇「俳
    句の解釈と鑑賞辞典」)