*************** 名歌鑑賞 ****************


花を見て 花を見こりし 花もなし 花見こりしは 
今日の花のみ 
                 橘曙覧

(はなをみて はなをみこりし はなもなし はなみ
 こりしは きょうのはなのみ)

意味・・花を見て美しいので、また見に来ようと思って
    も次に来た時はもう美しい花はないものだ。

    美しい花を見て楽しめるのは今日のこの日の花
    だけである。一期一会と、只今現在のこの美し
    い花を存分にたんのうしょう。

    「花」の繰り返しの面白さもあります。

 注・・こり=凝り。深く思い込む、熱中する。
    一期一会=一生に一度の出会いのことで、人と
     の出会いは大切にすべきとの戒め。ここでは
     もともと茶道の心得を説いた言葉で、今日と
     いう日、そして今いる時というものは二度と
     再び訪れるものではない。その事を肝に銘じ
     て茶道を行うべきである、の意。
    たんのう=十分に満足する、心行くまで味あう。

作者・・橘曙覧=1812~1868。紙商の家業を異母弟に
    譲り隠棲。福井藩の重臣と親交。

出典・・岩波文庫「橘曙覧全家集」。