*************** 名歌鑑賞 ****************


わび人の 涙に似たる 桜かな 風身にしめば 
まづこぼれつつ 
               西行

(わびびとの なみだににたる さくらかな かぜみに
 しめば まずこぼれつつ)

意味・・世を住み詫びている人の涙に似た桜であることだ。
    憂き世の風が身に沁(し)みると真っ先に涙がこぼ
    れるように、風が吹くと先ず散ってしまうものだ。

    花見をして楽しむ人がいる一方、いじめられたり
    リストラされたり、病身であったりして気落ちし
    て途方にくれる人もいる。涙を流す人もいる。

 注・・わび人=世捨て人、失意の人、思いわずらう人。
     つらく思う人。
    憂き世=つらいことの絶えないこの世。

作者・・西行=1118~1190。

出典・・山家集・・1035。