*************** 名歌鑑賞 ****************


いたづらに 過ぐる月日も おもしろし 花見てばかり
くらされぬ世は
                   四方赤良

(いたずらに すぐるつきひも おもしろし はなみて
 ばかり くらされぬよは)

意味・・なんということもなく過ぎてゆく月日でも、
    本当は面白いのではないか。春だからといっ
    て、花を見てばかりでは、暮らして行けない
    世の中なんだから。

    本歌の発想を揶揄(やゆ)しながら、平凡な日
    常の現実に誠実に生きようとする作者の態度
    です。
    朝早くから夜遅くまで働く庶民は生活して行
    くのに精一杯であり、花を見て楽しもうとい
    う余裕が無い。今日も一日なんとなく過ごし
    てしまった、と思う余裕も無い生活をしてい
    る。生活に追われて虚しいと考えることすら
    ない。そのような庶民にとってみれば、充実
    した一日を送っていることになり、見方を変
    えれば面白い日々を送っているのではないか、
    と詠んだ狂歌です。

    本歌です。
    いたづらに過ぐす月日は多かれど花見て暮らす
    春ぞすくなき      
              古今和歌集・藤原興風 

    (何もしないで過ぎていく一日一日は多いけれ
    ども、いざ春となって花を見るとなると、楽
    しい春の日というものは本当に短いものだ) 

 注・・いたづらに=なんのかいもないさま。むなしい
     こと。
    揶揄=からかうこと。

作者・・四方赤良=よものあから。1749~1823。支配
    勘定の幕臣。江戸時代の狂歌師。

出典・・万載(小学館「日本古典文学全集・狂歌」)