*************** 名歌鑑賞 ****************


昔とは 遠きをのみは 何かいはん 近き昨日も
けふはむかしを    
                       永福門院

(むかしとは とおきをのみは なにかいわん ちかき
 きのうも きょうはむかしを)

意味・・昔というのは、遠い過去のことだけと、
    どうしていえようか。近い昨日にしても
    今日になってみれば過ぎ去ってしまった
    昔に変りはないのに。

    昨日が積もって遠い昔になる。

    蕪村の句、参考です。

    「遅き日のつもりて遠き昔かな」
           (意味は下記参照)

作者・・永福門院=えいふくもんいん。1271~13
    42。藤原実兼(さねかね・太政大臣)の娘。
    伏見天皇の中宮。

出典・・永福門院百番御歌合(岩波書店「中世和
    歌集・鎌倉篇」)

参考句です。

遅き日の つもりて遠き むかしかな    
                          蕪村

意味・・日の暮れの遅い春の一日、自然と思いは過去に
    向う。昨日もこんな日があり、一昨日もこんな
    日であった。こんな風にして、過去の一日一日
    も過ぎていった。やがて来る残り少ない未来の
    ある一日も、このようにして昔となってゆくの
    だろう。

 注・・つもり=積り、一日一日が積って過去になる。

作者・与謝蕪村=1716~1783。池大雅と共に南宗画の
   大家