*************** 名歌鑑賞 ****************


わりなしや 人こそ人と 言わざらめ みづから身をや
思ひ捨つべき
                        紫式部

(わりなしや ひとこそひとと いわざらめ みずから
 みをや おもいすつべき)

意味・・辛(つら)いことだ、皆で私を仲間はずれにして
    うてあってくれないのは。

    宮仕えをしていて、同僚の女房から「生意気だ、
    澄ましている」と陰口をされて詠んだ歌です。

    味方になってくれる人は「何を言われても素知
    らぬ顔で受け流しなさい、いじめて喜んでいる
    人は一部の人にすぎないから」と言ってくれる
    が・・。

 注・・わりなし=つらい。無理もない、やむをえない。
    人こそ人と言はざらめ=人を人と認めない、仲
     間と認めない。「ざら」は打ち消しの「ず」
     の未然形。「め」は卑下する語。
    みづから=その人自身、当人。
    身=自分、我が身。
    思ひ捨つ=見捨てる、顧みない。
    女房(にょうぼう)=宮中で部屋を持っている高
     位の女官。
    うてあわない=相手にしない。九州博多方面の
     方言。

作者・・紫式部=生没年未詳。973頃の生まれ。「源氏
    物語」の作者。

出典・・ライザー・ダルビー著「紫式部物語」。

この歌の解釈の仕方、参考です。

「わりなしや 人こそ人と 言わざらめ」
直訳すると、
仕方がない事だ、人は自分の事を普通の人と言わないだろうが。

仕方のない事だ、どうせ私は普通の人の扱いをしてもらえないから、

つらいことだ、私は仲間外れにされて。

「みづから身をや思ひ捨つべき」
直訳すると、
みずから我が身を見捨てる事が出来ようかいや出来ない。

私は自分を見捨てる事は出来ない。自分なりに生きて生きたい。

人に相手にされなくても生きて行こう。

つらい事だ、人に相手にされないことは。
以上のように、直訳して翻訳という経路を取りました。