*************** 名歌鑑賞 ****************

よしあしに うつるならひを 思ふにも あやふきものは
こころなりけり
                   伴蒿蹊

(よしあしに うつるならいを おもうにも あやうき
 ものは こころなりけり)

意味・・善と悪に影響を受けて心が変化するのが人の世の
    常と思うけれども、どうなるのか気がかりなのは
    人のこころだなあ。

    まわりの環境に染まりやすく、善悪のけじめがゆ
    らぎがちなのが人間の心だという認識を詠んでい
    ます。

 注・・うつる=移る。心が他に移る、心が変化する。
    ならひ=習ひ・慣ひ。世の常、世間の道理。
    あやふき=危ふき。気がかり、不安。

作者・・伴蒿蹊=ばんこうけい。1733~1806。近江八幡の
    豪商の生まれ。文章家として有名。著作に「近世
    奇人伝」、歌集に「閑田詠草」がある。

出典・・歌集「閑田詠草」(小学館「近世和歌集」)