*************** 名歌鑑賞 ****************


賢しみと 物言うよりは 酒飲みて 酔ひ泣きするし
まさりたるらし
                 大伴旅人

(さかしみと ものいうよりは さけのみて えいなき
 するし まさりたるらし)

意味・・かしこぶって、小賢(こざか)しい口をきくよりは、
    酒に思う存分酔って、その極みでおいおい泣いて
    いる方がよほどよい心地になるものだよ。

    「酔い泣き」は酔いが極まって、恥じも外聞も、
    理性も知性も消えうせた状態になり、泣き上戸で
    声をあげて泣いている状態です。普通で考えれば
    こんなみっともない事はないのですが、そこまで
    行くのが究極の酒の飲み方だ、といっているよう
    です。とことん自己解放の出来ることが良いとい
    っています。しかし、裏を返せばそこまで飲まな
    いと自分の憂いは払うことが出来ないということ
    です。最愛の妻に先立たれた後だと考えると
    「酔い泣き」には男泣きする旅人のつらさがこめ
    られています。

作者・・大伴旅人=おおともたびと。665~731。従二位
    大納言。

出典・・万葉集・341