*************** 名歌鑑賞 ****************


この三朝 あさなあさなを よそほひし 睡蓮の花 
今朝はひらかず          
                   土屋文明

(このみあさ あさなあさなを よそおいし すいれん
 のはな けさはひらかず)

意味・・この三日ほどの朝ごとに、美しい可憐な花を装
    (よそ)うように咲かせていた睡蓮が、今朝はも
    う開こうとしない。
    つかの間の花の命の短いことだ。

    花は三日の命でも、力一杯花を咲かせそして満
    足して散って行ったのだろう。
    束の間の命であっても、誰にも負けずに力一杯
    花を咲かせた。力を出し切る事は美しい事だ。
   
 注・・三朝=三日ほどの朝。
    あさなあさな=朝ごと、毎朝。
    よそほひ=飾り整える、化粧する。睡蓮の花を
     擬人化している。
    睡蓮=蓮の花に似ている。蓮は水面より上に花
     が咲くが、睡蓮は水面に花咲かす。また蓮の
     葉には丸く切り込みがないが、睡蓮は切り込
     がはいっている。ともに三日咲いて花は散る。

作者・・ 土屋文明=つちやぶんめい。1890~1990。東
     大哲学科卒。明治大学教授。

出典・・笠間書院「和歌の解釈と鑑賞辞典」。