名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2007年05月

5/16 いざ子ども早く大和へ大伴の御津の浜松待ち恋ひぬらむ
                        山上憶良
5/16 埋も木の花咲くこともなかりしにみのなるはてぞ悲しかりける
                        源頼政
5/18 名にし負はばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと
                        在原業平
5/18 昨日こそ早苗とりしかいつの間に稲葉そよぎて秋風の吹く
                        読人知らず
5/19 這え笑え 二つになるぞ 今朝からは    小林一茶

5/19 露の世は 露の世ながら さりながら    小林一茶

5/20 見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ
                        藤原定家
5/21 のぼるべきたよりなき身は木の本にしひを拾ひて世を渡るかな
                        源頼政
5/22 月見れば千々に物こそ悲しけれわが身ひとつの秋にあらねど
                        大江千里 
5/23 柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺      正岡子規
5/23 花の雲 鐘は上野か 浅草か        松尾芭蕉
5/24 石ばしる垂水の上のさ蕨の萌え出づる春になりけるかも
                        志貴皇子
5/25 花の色は移りにけりないたづらにわが身世にふる眺めし間に
                        小野小町
5/26 み吉野の山の秋風さ夜更けて古里寒く衣打つなり
                        藤原雅経
5/27 久方の光のどけき春の日に静心なく花の散るらむ
                        紀友則
5/28 筏士よ待て言問わむ水上はいかばかり吹く山の嵐ぞ
                        藤原資宗
5/29 吾妹子が見し鞆の浦の天木香(むろ)の木は常世にあれど見し人ぞなき 大伴旅人
5/30 蓮葉の濁りに染まぬ心もてなにかは露を玉にあざむく
                        僧正遍昭
5/31 われと来て 遊べや親の ない雀      小林一茶
5/31 麦秋や 子を負ひながら いはし売り    小林一茶
5/31 月花や 四十九年の むだ歩き       小林一茶 


5/1 瓜食めば子ども思ほふ栗食めばまして偲はゆ
                   山上憶良
5/2 世の中を何にたとえむ朝ぼらけ漕ぎ行く舟の跡の白波 
                       沙弥満誓
5/3 心あらむ人にみせばや津の国の難波あたりの春の景色を
                        能因法師
5/4 世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし
                        在平業平
5/5 妹として二人作りしわが山斎は小高く繁くなりにけるかも
                        大伴旅人
5/6 東海の小島の磯の白砂にわれ泣きぬれて蟹とたわむる
                        石川啄木
5/7 淡海の海夕浪千鳥汝が鳴けば情もしのに古思ほゆ
                        柿本人麻呂
5/8 ほととぎす鳴きつる方を眺むればただ有明の月ぞ残れる
                        藤原実定
5/9 この世をばわが世とぞ思ふ望月のかけたることもなしと思へば
                        藤原道長
5/10 たれをかも知る人にせむ高砂の松も昔の友ならなくに
                        藤原興風 
5/11 さみだれの注ぐ山田に賎の女が裳裾ぬらして玉苗植うる
                        佐々木信綱 
5/11 離別(さら)れたる身を踏込(ふんご)んで田植えかな
                        与謝蕪村
5/12 都にはまだ青葉にて見しかども紅葉散り敷く白河の関
                        源頼政
5/13 秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる
                        藤原敏行
5/14 岩代の浜松が枝を引き結び真幸くあらばまた還り見む
                        有馬皇子
5/14 岩代の岸の松が枝結びけむ人は帰りてまた見けむかも
           長忌寸意吉麻呂(ながのいみきおおきまろ)
5/15 いろいろの事 思い出す さくらかな
                        松尾芭蕉
5/15 目に嬉し 君恋の扇 真白なる
                        与謝蕪村

われと来て 遊べや 親のない雀   小林一茶

(われときて あそべやおやの ないすずめ)

意味・・親のない雀よ、お前も寂しいだろう。
    おれも親なし子で、寂しくてしょうがない。
    こっちに来て遊ばないか。


出典・・おらが春。

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麦秋や 子を負ひながら いはし売り  小林一茶

(むぎあきや こをおいながら いわしうり)

 注・・いはし売り=いわしは小魚で値段も安く、
    売ってもいくらも金にならない。
    そんな魚を背負って、麦の収穫期めあてに
    山村を売り歩く哀れさを出している。

意味・・黄色く熟した麦畑の中の道を、笠を被った
    越後女が子供を背負った上に、天秤棒をかつ
    いでいわしを売り歩く。その姿はいかにも
    あわれである。

出典・・おらが春。

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月花や 四十九年の むだ歩き   小林一茶

(つきはなや しじゅうくねんの むだあるき)

意味・・私は長い間、旅をしながら俳句ずくりに
    専念して来たものだ。
    なかでも、上記の二句のように、世間の
    苦しみや悲しみを見て詠んで来た。
    だが、俳句に詠んだもののそれだけで
    良いのであろうか。
    問題解決となれば難しいことだが。
    じっさい、自分自身の生活も出来ずに
    悩んでいる状態だ。(この歳になっても
    結婚できない)
    自分の人生はむだ歩きなのだろうか。

   (一茶は50過ぎになって、財産分与され
    結婚した。)

出典・・七番日記。

作者・・小林一茶=こばやしいっさ。1763~1827。
     長野県柏原の農民の子。三歳で生母に
     死別。継母と不和のため十五歳で江戸
     に出て奉公生活の辛酸をなめた。亡父
     の遺産をめぐり継母と義弟との長い抗
     争が続く。五十一歳で郷里に帰り結婚
     した。
    

蓮葉の 濁りに染まぬ 心もて なにかは露を 
玉とあざむく
                   遍昭

(はちすばの にごりにしまぬ こころもて なにかは
 つゆを たまとあざむく)

意味・・蓮の葉は泥水のなかに生えながら濁りに染まらない
    清らかな心を持っているのに、その心でどうして
    葉の上に置く露を玉と見せて人をだますのか。

    上句は法華経の経文(世間の法に染まらざること
    蓮華の水にあるがごとし)による。
    露を玉とみる典型的な見立ての伝統を踏まえ、清浄
    の象徴である蓮が欺く、と意表をついた表現が趣向。

作者・・遍昭=へんじょう。816~890。従五位上・蔵人頭。
     出家後僧正になる。

出典・・古今和歌集・165

吾妹子が 見し鞆の浦の 天木香の木は 常世にあれど
見し人ぞなき
                     大伴旅人

(わぎもこが みしとものうらの むろのきは とこよに
 あれど みしひとぞなき)

 注・・吾妹子(わぎもこ)=「わがいもこ」の転で、自分の
         妻を親しく呼んだ語。
    鞆の浦=広島県福山市鞆町の海岸。
    天木香=「むろ」と読む。松杉科の常緑高木樹。
    常世(とこよ)=永遠に変わらない事。
    見し人=亡き妻をさす。

意味・・わたしの妻がかって見た鞆の浦の「むろ」の木は、
    いつまでも変わらずにあるけれど、その見た妻は
    (すでにこの世に)いない。

    自然の永久不変に比して、人間のはかなさを歎いて
    いるが、体験に根ざした感慨であるだけに、実感が
    こもっています。

作者・・大伴旅人=おおとものたびと。665~731。従二位・
     大納言。

出典・・万葉集・446。



筏士よ 待て言問はむ 水上は いかばかり吹く
山の嵐ぞ
                  藤原資宗

(いかだしよ まてこととわん みなかみは 
 いかばかりふく やまのあらしぞ)

 注・・筏士=筏をあやつることを職業としている人。
       筏は木や竹を並べつないで、流れに
       浮かべるもの。

意味・・筏で川を下っている人よ、ものを尋ねたい。
    この川の上流ではいったいどのくらい激しく
    山の嵐が吹いているのかを。

    殿上人(てんじょうびと)たちとともに、
    大堰川(おおいがわ)に遊んだ折、「紅葉
    水に浮かぶ」の題で詠んだ歌です。
    この歌の面白さの一つは、「紅葉」の語を
    使わずに筏師に紅葉を散らす山の嵐の状態
    を問うことで、川に浮かぶ紅葉の情景を
    喚起する点にあります。

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    資宗(すけむね)の潜在意識としてあるのは、
    結果を知ってその原因となった状況を知り
    そして、次に起こるべきことを予測して
    次の策を打つ。
    すなわち、一葉落ちて天下の秋を知るです。

作者・・藤原資宗=ふじわらのすけむね。生没年未詳。
     正四位下・右馬頭となったが1087年出家。  

出典・・新古今和歌集・554。

ひさかたの 光のどけき 春の日に 静心なく
花の散るらむ
                 紀友則

(ひさかたの ひかりのどけき はるのひに しずこころ
 なく はなのちるらん)

 注・・ひさかたの=天・空・日・月などにかかる枕詞。
    静心(しずこころ)=落ち着いた心。

意味・・春の陽射しはのどかにゆきわたっているのに、
    どうして桜の花はそわそわと散り急ぐのだろうか。

    のどかな春、のどかに咲いた桜の花。いつまでも
    このままであってほしい。

作者・・紀友則=きのとものり。生没年未詳。貫之とは従兄
     弟に当たる。古今集の撰者であったが完成前に没
     した。

出典・古今和歌集・84、百人一首・33。

み吉野の 山の秋風 さ夜ふけて 古里寒く
衣打つなり
                藤原雅経

(みよしのの やまのあきかぜ さよふけて ふるさと
 さむく ころもうつなり)

 注・・古里=吉野は古代の離宮の地であることから古京
       の意。人に忘れ去れ、荒れ果てた地のイメ
       ージがこめられている。
    衣打つ=砧(きぬた)のこと。衣を柔らかくしたり
       光沢を出すため木槌で打つこと。
       女性がする夜なべ作業であった。

意味・・吉野山の秋風は夜更けて寒く吹き、かって都の
    あった里では寒々と衣を打つ音が聞こえて来る。

    古京の秋の夜寒のわびしさを、山の秋風の音と
    里の砧(きぬた)を打つ音とにより、流麗な音楽
    的な調べで詠っている。

作者・・藤原雅経=ふじわらのまさつね。1170~1221。

出典・・新古今和歌集・483。


花の色は 移りけりな いたづらに わが身世にふる
ながめしまに
                 小野小町

(はなのいろは うつりけりな いたづらに わがみ
 よにふる ながめせしまに)

 注・・花の色=表面は花であるが、裏面に作者の容色
     をさす。
    移り=色あせること。
    いたづら=むなしいさま、つまらないさま。
    ふる=降ると経る、古る・年を取る、を掛ける。
    ながめ=長雨と眺め(物思いにふける)を掛ける。

意味・・花の色も私の美しさも、もはや色あせってしま
    った。思えば、むなしくも我が身はすっかり老
    い衰えた。生きていることの物思いをしている
    うちに、花が春の長雨にうたれて散っていくよ
    うに。

    崩れゆく美を適度の想像を交えて構成したもの
    で、余情も漂っています。

作者・・小野小町=おののこまち。生没年未詳。六歌仙
    の一人。絶世の美人といわれ各地に小町伝説を
    残す。

出典・・古今和歌集・113。

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    蛇足なのでそのつもりで読んでください。


蛇足・・驕慢な物思いとはどんな事でしょうか。

    例えば・・です。

    営業の仕事に携わっているとします。
    販売目標が決められています。
    好調でこの目標以上に販売が続いている時。
    「上の人は見てくれんなぁ、こんなに努力しているのに」
    「それが当たり前なんて言いはる」。
    「給料もこのところ全然上がってないし、やる気がなく
    なるよなぁ」
    販売の不振が続くと。
    「売上げ目標が高すぎるよぉ、かってに決めてしもうて」
    「誰も見向きもしない物を売らせてぇ。売れるものを開発
    して欲しいよなあ」「ああ、また小言聞かなきゃいけんか。
    給料半分は我慢賃と思うか」

    小野小町の心
    「うん、今日はよく売れた、昨日と比べて何処が良かった
    のだろうか」「よし、明日もこの方法でいくとしょう」
    「売上げ目標を達成したがこれは不振の時の貯金としょう」
  
    「今日の売上げが芳しくなかったのはどうしてだろう、あの
    お客さんのほめ方が悪かったかなぁ」。
    「そういえば、忙しそうにしていたなぁ、相手の都合も知ら
    なくちゃ」「よし明日の作戦をたてるぞ」

作者・・小野小町=生没年未詳。850年頃に後宮に仕えた。

出典・・古今和歌集・113、百人一首・9。


    
    

石ばしる 垂水の上の さ蕨の 萌え出づる春に 
なりにけるかも
             志貴皇子(しきのみこ)
             (万葉集・1418)
(いわばしる たるみのうえの さわらびの もえいずる
 はるに なりけるかも)

意味・・水が激しく岩にぶつかり落ちる滝のほとりの蕨が
    今こそ芽吹く春になったことだなあ。

    雪どけのために水かさが増した滝のほとりに、芽吹
    いたワラビを見つけたことを、長い間待ち焦がれた
    春の訪れとして受け取り、率直な喜びを歌っている。

    詞書では「歓びの歌一首」とあり、これは何かの喜び
    を抽象的に歌ったものです。
    大きな仕事を成し遂げた時の晴れ晴れとした気持を
    感じさせられます。

 注・・垂水の上=滝のほとり、垂水はたれ落ちる水のこと。

作者・・志尊皇子=~715。天智天皇の子。

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