名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2007年05月

筏士よ 待て言問はむ 水上は いかばかり吹く
山の嵐ぞ
                  藤原資宗

(いかだしよ まてこととわん みなかみは 
 いかばかりふく やまのあらしぞ)

 注・・筏士=筏をあやつることを職業としている人。
       筏は木や竹を並べつないで、流れに
       浮かべるもの。

意味・・筏で川を下っている人よ、ものを尋ねたい。
    この川の上流ではいったいどのくらい激しく
    山の嵐が吹いているのかを。

    殿上人(てんじょうびと)たちとともに、
    大堰川(おおいがわ)に遊んだ折、「紅葉
    水に浮かぶ」の題で詠んだ歌です。
    この歌の面白さの一つは、「紅葉」の語を
    使わずに筏師に紅葉を散らす山の嵐の状態
    を問うことで、川に浮かぶ紅葉の情景を
    喚起する点にあります。

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    資宗(すけむね)の潜在意識としてあるのは、
    結果を知ってその原因となった状況を知り
    そして、次に起こるべきことを予測して
    次の策を打つ。
    すなわち、一葉落ちて天下の秋を知るです。

作者・・藤原資宗=ふじわらのすけむね。生没年未詳。
     正四位下・右馬頭となったが1087年出家。  

出典・・新古今和歌集・554。

ひさかたの 光のどけき 春の日に 静心なく
花の散るらむ
                 紀友則

(ひさかたの ひかりのどけき はるのひに しずこころ
 なく はなのちるらん)

 注・・ひさかたの=天・空・日・月などにかかる枕詞。
    静心(しずこころ)=落ち着いた心。

意味・・春の陽射しはのどかにゆきわたっているのに、
    どうして桜の花はそわそわと散り急ぐのだろうか。

    のどかな春、のどかに咲いた桜の花。いつまでも
    このままであってほしい。

作者・・紀友則=きのとものり。生没年未詳。貫之とは従兄
     弟に当たる。古今集の撰者であったが完成前に没
     した。

出典・古今和歌集・84、百人一首・33。

み吉野の 山の秋風 さ夜ふけて 古里寒く
衣打つなり
                藤原雅経

(みよしのの やまのあきかぜ さよふけて ふるさと
 さむく ころもうつなり)

 注・・古里=吉野は古代の離宮の地であることから古京
       の意。人に忘れ去れ、荒れ果てた地のイメ
       ージがこめられている。
    衣打つ=砧(きぬた)のこと。衣を柔らかくしたり
       光沢を出すため木槌で打つこと。
       女性がする夜なべ作業であった。

意味・・吉野山の秋風は夜更けて寒く吹き、かって都の
    あった里では寒々と衣を打つ音が聞こえて来る。

    古京の秋の夜寒のわびしさを、山の秋風の音と
    里の砧(きぬた)を打つ音とにより、流麗な音楽
    的な調べで詠っている。

作者・・藤原雅経=ふじわらのまさつね。1170~1221。

出典・・新古今和歌集・483。


花の色は 移りけりな いたづらに わが身世にふる
ながめしまに
                 小野小町

(はなのいろは うつりけりな いたづらに わがみ
 よにふる ながめせしまに)

 注・・花の色=表面は花であるが、裏面に作者の容色
     をさす。
    移り=色あせること。
    いたづら=むなしいさま、つまらないさま。
    ふる=降ると経る、古る・年を取る、を掛ける。
    ながめ=長雨と眺め(物思いにふける)を掛ける。

意味・・花の色も私の美しさも、もはや色あせってしま
    った。思えば、むなしくも我が身はすっかり老
    い衰えた。生きていることの物思いをしている
    うちに、花が春の長雨にうたれて散っていくよ
    うに。

    崩れゆく美を適度の想像を交えて構成したもの
    で、余情も漂っています。

作者・・小野小町=おののこまち。生没年未詳。六歌仙
    の一人。絶世の美人といわれ各地に小町伝説を
    残す。

出典・・古今和歌集・113。

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    蛇足なのでそのつもりで読んでください。


蛇足・・驕慢な物思いとはどんな事でしょうか。

    例えば・・です。

    営業の仕事に携わっているとします。
    販売目標が決められています。
    好調でこの目標以上に販売が続いている時。
    「上の人は見てくれんなぁ、こんなに努力しているのに」
    「それが当たり前なんて言いはる」。
    「給料もこのところ全然上がってないし、やる気がなく
    なるよなぁ」
    販売の不振が続くと。
    「売上げ目標が高すぎるよぉ、かってに決めてしもうて」
    「誰も見向きもしない物を売らせてぇ。売れるものを開発
    して欲しいよなあ」「ああ、また小言聞かなきゃいけんか。
    給料半分は我慢賃と思うか」

    小野小町の心
    「うん、今日はよく売れた、昨日と比べて何処が良かった
    のだろうか」「よし、明日もこの方法でいくとしょう」
    「売上げ目標を達成したがこれは不振の時の貯金としょう」
  
    「今日の売上げが芳しくなかったのはどうしてだろう、あの
    お客さんのほめ方が悪かったかなぁ」。
    「そういえば、忙しそうにしていたなぁ、相手の都合も知ら
    なくちゃ」「よし明日の作戦をたてるぞ」

作者・・小野小町=生没年未詳。850年頃に後宮に仕えた。

出典・・古今和歌集・113、百人一首・9。


    
    

石ばしる 垂水の上の さ蕨の 萌え出づる春に 
なりにけるかも
             志貴皇子(しきのみこ)
             (万葉集・1418)
(いわばしる たるみのうえの さわらびの もえいずる
 はるに なりけるかも)

意味・・水が激しく岩にぶつかり落ちる滝のほとりの蕨が
    今こそ芽吹く春になったことだなあ。

    雪どけのために水かさが増した滝のほとりに、芽吹
    いたワラビを見つけたことを、長い間待ち焦がれた
    春の訪れとして受け取り、率直な喜びを歌っている。

    詞書では「歓びの歌一首」とあり、これは何かの喜び
    を抽象的に歌ったものです。
    大きな仕事を成し遂げた時の晴れ晴れとした気持を
    感じさせられます。

 注・・垂水の上=滝のほとり、垂水はたれ落ちる水のこと。

作者・・志尊皇子=~715。天智天皇の子。

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