名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2007年07月

妹もわれも 一つなれかも 三河なる 二見の道ゆ
別れかねつる             高市黒人

(いももわれも ひとつなれかも みかわなる
 ふたみのみちゆ わかれかねつる)

意味・・あなたも私も一つであるからか、三河の
    国にある二見の道から別れられない。

    一、二、三の数字を詠み込んだ、洒落の
    歌です。

 注・・妹=男性から女性を親しんでいう語。
      妻・恋人にいう。

さざ浪や 志賀の都は 荒れにしを 昔ながらの 
山桜かな
             平忠度(たいらのただのり)
             (千載和歌集・66)

(さざなみや しがのみやこは あれにしを むかし
 ながらの やまざくらかな)

意味・・志賀の古い都はすっかり荒廃してしまったけれど、
    昔のままに美しく咲き匂っている長等山の山桜よ。

    古い都を壬申(じんしん)の乱で滅んだ大津京に設定し、
    その背後にある長等山の桜を配して、人間社会の
    はかなさと悠久(ゆうきゅう)な自然に対する感慨を
    華やかさと寂しさを込めて表現しています。

 注・・さざ浪=志賀の枕詞。
    ながら=接続詞「ながら」と「長等山」の掛詞。

作者・・平忠度=1144~1184。正四位下・薩摩守。

霜やけの 手を吹いてやる 雪まろげ   羽紅(うこう)

(しもやけの てをふいてやる ゆきまろげ)

意味・・雪まろげに興じていた子供の手を見ると、
    霜やけで赤くはれているので、息を吹き
    かけ温めてやった。

    いかにも母親らしい、子を思う情愛に
    あふれた句です。

 注・・雪まろげ=雪を丸め転がして大きくすること。
    

駿河なる 宇津の山べの うつつにも 夢にも人に 
逢はぬなりけり            在原業平

(するがなる うつのやまべの うつつにも ゆめにも
 ひとに あわぬなりけり)

意味・・私は今駿河の国にある宇津の山のほとりに来て
    いますが、現実にお会い出来ないのはもちろん、
    夢の中でさえもお会いすることが出来ません。
    (あなたはもう、私を思ってくださらないのですね)

    当時は、相手が思っていてくれる時は、その姿が夢
    に出ると信じられていた。「夢にも人に逢はぬ」は、
    その人がすでに自分のことを思っていないのではと
    嘆いているのです。

 注・・駿河なる宇津の山=静岡県宇津谷峠。「宇津」で「うつ」
       を導いています。
    うつつ=現実。
    

泰平の ねむりをさます じょうきせん たった四はいで
夜も寝られず

(たいへいの ねむりをさます じょうきせん たったしはいで
 よるもねられず)

意味・・日頃安らかに眠れていたのに、上喜撰というお茶をたった
    四杯飲んだら、興奮して夜になっても寝られなくなった。
    平和な世の中であったが、蒸気船がたった四隻来ただけ
    で世の中は大騒ぎとなってうかうか夜も寝られなくなった。

    1853年ペリーが浦賀沖に四隻の蒸気船に乗ってやって
    来た。当時、徳川幕府は鎖国をしていたものの長崎のみで
    朝鮮・中国・オランダとの交易をしていた。ペルーは長崎
    以外の港も認めるべしと恫喝外交でせまって江戸湾にも
    艦隊を進入させ徳川幕府を驚かした。

 注・・じようきせん=宇治の銘茶である「上喜撰」、カフェイン
       の度が強いので飲むと興奮して夜は寝られない。
       それと「蒸気船」を掛けている。

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