名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2007年10月

筒井つの 井筒にかけし まろがたけ 過ぎにけらしな 
妹見ざるまに               読み人知らず

(つついつの いづつにかけし まろがたけ すぎにけらしな
 いもみざるまに)

意味・・筒状に掘った井戸の井戸枠の高さと測り比べた私の
    背丈(せたけ)はもう枠の高さを越してしまったよう
    だなあ。あなたに逢わないうちに。

    井戸のそばで遊んだ幼なじみの男女が成人して愛し
    合うようになり男から贈った求婚の歌です。

 注・・筒井=筒状に掘った井戸。
    井筒=地上部文の筒状の井戸枠。
    まろがたけ=「まろ」は男子の自称。「たけ」は背丈。
    妹=男が女を親しんで言う語。主に妻や恋人に言う。

咲く花は ちぐさながらに あたなれど 誰かは春を 
うらみはてたる      藤原興風(ふじわらおきかぜ)

(さくはなは ちぐさながらに あたなれど だれかははるを
 うらみはてたる)

意味・・花の種類は色々あるが、それがすべて散り足の早い
    ことは人の移り気と同様である。そういう花を咲か
    せる春に恨みを述べた人があるだろうか。

    花の散りやすいのを人の心の変わりやすいのにたとえ、
    それに未練を捨てきらないのを恋の心にたとえて詠んだ
    ものです。

注・・ちぐさ=千種、種類の多いこと。
    あたなれど=移り気であるが。「あた」は花の散り
        やすいことを人の移り気にたとえた。

月やあらぬ 春や昔の 春ならぬ わが身ひとつは 
もとの身にして      
           在原業平(ありはらなりひら)
           (古今和歌集・747)
(つきやあらぬ はるやむかしの はるならぬ わがみ
 ひとつは もとのみにして)

意味・・この月は以前と同じ月ではないのか。春は去年の春と
    同じではないのか。私一人だけが昔のままであって、
    月や春やすべてのことが以前と違うように感じられる
    ことだ。

    しばらく振りに恋人の家に行ってみたところ、すっかり
    変わった周囲の光景(すでに結婚している様子)に接して
    落胆して詠んだ歌です。
   

柊木が 咲いても兵は 帰り来ず  福島小雷(ふくしまこらい)

(ひいらぎが さいてもへいは かえりこず)

意味・・無事を祈って植えた柊なのだが、今年は花が咲くように
    なった。でも、兵隊に行ってまだ戻って来ない。

 注・・柊木=木犀(もくせい)科の常緑低木、とげがあるので
       魔よけに植えられる。

物言はぬ 四方のけだもの すらだにも 哀れなるかな 
親の子思ふ           源実朝(みなもとさねとも)

(ものいわぬ よものけだもの すらだにも あわれなるかな
 おやのこをおもう)

意味・・物を言わない、いたるところにいる獣でさえ、感動
    させるではないか。親が子を愛するという事は。

    慈悲の心を詠んだ歌です。
    獣が持っているのなら、当然人間も持っているはずの
    親子の愛が、しばしば失われていることの悲しみを詠
    んだものです。    

 注・・哀れなる=しみじみと心が打たれる、感慨深い。

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