名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2007年11月

11/1 すみだ川 舟呼ぶ声も うづもれて 浮霧深し
   秋の夕浪             清水浜臣
11/2 斧入れて 香におどろくや 冬木立 蕪村
11/3 大海の 磯もとどろに 寄する波 割れて砕けて
   さけて散るかも          源実朝
11/4 世を捨てて 山に入る人 山にても なほ憂き時は
   いづちゆくらむ          凡河内みつね
11/5 白露に 風の吹きしく 秋の野は 貫きとめぬ
   玉ぞ散りける           文屋朝康
11/6 やぶ入りや 浪花を出でて 長柄川 蕪村
11/7 紫の ひともとゆえに 武蔵野の 草はみながら
   あはれとぞ見る          読み人知らず 
11/8 寂しさに たへたる人の またもあれな 庵ならべん
   冬の山里             西行
11/9 おきのいて 身を焼くよりも 哀しきは 都島べの
   別れなりけり           読み人知らず
11/10 古河の 流れを引きつ 種おろし  蕪村
11/11 水鳥も 水の上とや よそに見む 我も浮きたる
   世をすぐしつつ          紫式部
11/12 白川の 知らずといはじ 底清み 流れて世々に
   すむと思へば           平忠文
11/13 あしびきの 山田の案山子 汝さへも 穂拾ふ鳥を
   守るてふものを          良寛
11/14 茨老い すすき痩せ 萩おぼつかな 蕪村
11/15 受け継ぎて 国の司の 身になれば 忘れまじきは
   民の父母             上杉鷹山 

11/16 秋は来ぬ 年も半ばに すぎぬとや 荻吹く風の
    おどろかすらむ          寂然
11/17 暗きより 暗き道にぞ 入りぬべき はるかに照らせ
    山の端の月            和泉式部
11/18 上山は 山風寒し ちちのみの 父のみことの
    足冷ゆらむか           平賀元義
11/19 大堰川 かへらぬ水に 影みえて ことしも咲ける
    山さくらかな           香川影樹
11/20 わが庵は 都のたつみ しかぞすむ 世をうぢ山と
    人はいふなり           喜撰法師
11/21 山深み 春とも知らぬ 松の戸に たえだえかかる
    雪の玉水             式子内親王
11/22 杉の香の 高尾の護符や 星月夜  水原秋桜子
11/23 招くぞと 心許して 立ち寄れば 尾花が末に
    秋風ぞ吹く            宗川儀八
11/24 うばたまの わが黒髪 かはるらむ 鏡の影に
    降れる白雪            紀貫之
11/25 行き暮れて 木の下陰を 宿とせば 花やこよひの
    主ならまし            平忠度
11/26 秋の灯や ゆかしき奈良の 道具市 蕪村
11/27 久しくも なりけるかな 住江の まつはくるしき
    ものにぞありける         読み人知らず
11/28 あしびきの 黒坂山の 木の間より 漏りくる月の
    影のさやけき           良寛
11/29 世の中を 憂しと恥しと 思へども 飛び立ちかねつ
    鳥にしあらねば          山上憶良
11/30 花咲かで 七日鶴見る 麓かな   芭蕉

花咲で 七日鶴見る 麓かな   芭蕉(ばしょう)

(はなさかで なぬかつるみる ふもとかな)

意味・・花も七日、鶴も七日というが、麓の村では
    花が咲き鶴が舞い遊んでいる。さてこの村
    ではこれから七日間、絵のように優雅な景
    が楽しめることだ。

    俗に花の盛りは七日といい、鶴は一度下り
    るとその場所に七日間とどまるという。

世の中を 憂しと恥しと 思へども 飛び立ちかねつ 
鳥にしあらねば   
            山上憶良(やまのうえのおくら)
            (万葉集・893)
(よのなかを うしとやさしと おもえども とびたちかねつ
 とりにしあらねば)

意味・・世の中をいやな所、身が細るように耐えがたいような
    所と思っても、捨ててどこかに飛び去ることも出来ま
    せん。私どもは所詮(しょせん)鳥ではないのだから。

    現実社会の苦しみにあえぎながら、それから逃れよう
    もなく、結局それに耐つつ生きざるを得ないことを悟
    った時の窮極の心がとらえられています。

 注・・憂し=つらい、憂鬱だ。
    恥(やさ)し=身が細るように耐えがたい、肩身が狭い。

作者・・山上憶良=660~733。遣唐使として渡唐。筑前守。

あしびきの 黒坂山の 木の間より 漏りくる月の 影のさやけき
                      良寛(りょうかん)

(あしびきの くろさかやまの このまより もりくるつきの
 かげのさやけき)

意味・・黒坂山の麓に宿をとって空を眺めると、山の木々の
    間から漏れてくる月の光の何と明るく澄んで美しい
    ことだろう。

    詞書に「黒坂山の麓に宿りて」とあります。

 注・・あしびき=山の枕詞。
    黒坂=新潟県和島村黒坂。
    さやけき=さわやか、清く澄んでいる。

久しくも なりにけるかな 住江の まつはくるしき 
ものにぞありける          読み人知らず

(ひさしくも なりにけるかな すみのえの まつはくるしき
 ものにぞありける)

意味・・好きな人と会う機会をねらって待っているのだが、
    それがかなえられずに久しい時が経ってしまった
    ものだ。「久しい」といえば「住江の松」がすぐ
    思い出されるが、「まつ」とはこんなに苦しい事
    なのか。

 注・・久しい=あの人を待つ間が久しい。
    住江=大阪市住吉付近の海岸。「まつ」の枕詞。
    まつ=「松」と「待つ」を掛ける。

秋の灯や ゆかしき奈良の 道具市    蕪村(ぶそん)

(あきのひや ゆかしきならの どうぐいち)

意味・・古都奈良の、とある路傍に油灯をかかげる古道具
    の市が出ている。さすがに仏都にふさわしく、仏像
    やさまざまな仏具も混じっていて、これらの品々に
    は年輪を得た古趣が感じられ、立ち去りがたい奥ゆ
    かしさがあるものだ。

行き暮れて 木の下陰を 宿とせば 花やこよひの 主ならまし
                 平忠度(たいらのただのり)

(ゆきくれて このしたかげを やどとせば はなやこよいの
 あるじならまし)

意味・・行くうちに日が暮れて、桜の木の下を今夜の宿と
    するならば、花が今夜の主となってこの悔しさを
    慰めてくれるだろう。

    一の谷の戦いで敗れて落ち行く途中、仮屋を探し
    ている時、敵方に討たれた。この時箙(えびら)に
    この歌が結ばれていた。

    敗者の悲しみとして、明治の唱歌「青葉の笛」に
    なっています。
           https://youtu.be/FMwjw6zfbVQ

    一の谷の 戦(いくさ)敗れ
    討たれし平家の 公達(きんだち)あわれ
    暁寒き 須磨の嵐に
    聞こえしはこれか 青葉の笛

    更くる夜半に 門を敲(たた)き
    わが師に託せし
    言の葉あわれ
    今はの際(きわ)まで
    持ちし箙(えびら)に
    残れるは「花や今宵」の歌

 注・・行き暮れて=歩いて行くうちに暮れて。

うばたまの わが黒髪や かはるらむ 鏡の影に 降れる白雪
                      紀貫之(きのつらゆき)

(うばたまの わがくろかみや かわるらん かがみのかげに
 ふれるしらゆき)

意味・・私の黒髪はもう白くなってしまった。鏡に映る
    私の頭には雪が降っている。

    鏡の中の自分を見て、あらためて自分が老いて
    しまったと自覚して、嘆いて詠んだ歌です。

 注・・うばたまの=黒、闇、夜などの枕詞。

招くぞと 心許して 立ち寄れば 尾花が末に 秋風ぞ吹く
                   宗川儀八(むねかわぎはち)

(まねくぞと こころゆるして たちよれば おばながすえに
 あきかぜぞふく)

意味・・招かれて喜んで行った所、そこにはもう秋風が吹いて
    尾花の葉を揺らしている。
    
    形だけの招待とは知らずに行ったところ、尾花が秋風
    で揺らいでいて、招待した相手は呆れかえっている。

 注・・秋風=「秋」に「飽き」が掛けられている。

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