名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2007年11月

久しくも なりにけるかな 住江の まつはくるしき 
ものにぞありける          読み人知らず

(ひさしくも なりにけるかな すみのえの まつはくるしき
 ものにぞありける)

意味・・好きな人と会う機会をねらって待っているのだが、
    それがかなえられずに久しい時が経ってしまった
    ものだ。「久しい」といえば「住江の松」がすぐ
    思い出されるが、「まつ」とはこんなに苦しい事
    なのか。

 注・・久しい=あの人を待つ間が久しい。
    住江=大阪市住吉付近の海岸。「まつ」の枕詞。
    まつ=「松」と「待つ」を掛ける。

秋の灯や ゆかしき奈良の 道具市    蕪村(ぶそん)

(あきのひや ゆかしきならの どうぐいち)

意味・・古都奈良の、とある路傍に油灯をかかげる古道具
    の市が出ている。さすがに仏都にふさわしく、仏像
    やさまざまな仏具も混じっていて、これらの品々に
    は年輪を得た古趣が感じられ、立ち去りがたい奥ゆ
    かしさがあるものだ。

行き暮れて 木の下陰を 宿とせば 花やこよひの 主ならまし
                 平忠度(たいらのただのり)

(ゆきくれて このしたかげを やどとせば はなやこよいの
 あるじならまし)

意味・・行くうちに日が暮れて、桜の木の下を今夜の宿と
    するならば、花が今夜の主となってこの悔しさを
    慰めてくれるだろう。

    一の谷の戦いで敗れて落ち行く途中、仮屋を探し
    ている時、敵方に討たれた。この時箙(えびら)に
    この歌が結ばれていた。

    敗者の悲しみとして、明治の唱歌「青葉の笛」に
    なっています。
           https://youtu.be/FMwjw6zfbVQ

    一の谷の 戦(いくさ)敗れ
    討たれし平家の 公達(きんだち)あわれ
    暁寒き 須磨の嵐に
    聞こえしはこれか 青葉の笛

    更くる夜半に 門を敲(たた)き
    わが師に託せし
    言の葉あわれ
    今はの際(きわ)まで
    持ちし箙(えびら)に
    残れるは「花や今宵」の歌

 注・・行き暮れて=歩いて行くうちに暮れて。

うばたまの わが黒髪や かはるらむ 鏡の影に 降れる白雪
                      紀貫之(きのつらゆき)

(うばたまの わがくろかみや かわるらん かがみのかげに
 ふれるしらゆき)

意味・・私の黒髪はもう白くなってしまった。鏡に映る
    私の頭には雪が降っている。

    鏡の中の自分を見て、あらためて自分が老いて
    しまったと自覚して、嘆いて詠んだ歌です。

 注・・うばたまの=黒、闇、夜などの枕詞。

招くぞと 心許して 立ち寄れば 尾花が末に 秋風ぞ吹く
                   宗川儀八(むねかわぎはち)

(まねくぞと こころゆるして たちよれば おばながすえに
 あきかぜぞふく)

意味・・招かれて喜んで行った所、そこにはもう秋風が吹いて
    尾花の葉を揺らしている。
    
    形だけの招待とは知らずに行ったところ、尾花が秋風
    で揺らいでいて、招待した相手は呆れかえっている。

 注・・秋風=「秋」に「飽き」が掛けられている。

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