名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2008年02月

白梅や 北野の茶店に すまひ取    蕪村(ぶそん)

(しらうめや きたののちゃやに すもうとり)

意味・・京都北野天満宮の梅も今が盛り。花びらの時折
    散りかかる茶店の床几(しょうぎ)に、大きな体
    の相撲取りが腰掛けてゆったりと休んでいる。

    凛然(りんぜん)とした風姿と清爽(せいそう)感
    が共通する白梅と力士の取り合わせが句の眼目
    です。一般の人々の中に混じってひときわ目を
    引く力士が目に浮かびます。

 注・・北野=京都北野天満宮。

    

葛飾の 真間の井を見れば 立ち平し 水汲ましけむ 
手児奈し思ほふ       高橋虫麻呂(たかはしむしまろ)  

(かつしかの ままのいをみれば たちならし みずくましけん
 てごなしおもおゆ)

意味・・葛飾の真間の井戸を見ると、ここに通って水を汲んで
    いたというかわいらしい手児奈のことが思われる。

 注・・葛飾=今の東京都と千葉県の一部。
    真間=千葉県市川市真間。
    立ち平(なら)し=歩きまわって平にする。
    手児奈(てこな)=貧しい姿でも容姿が整った女の子。

引馬野に にほふ榛原 入り乱れ 衣にほわせ 旅のしるしに
          長忌寸意吉麻呂(ながのいみきおきまろ)

(ひくまのに におうはりはら いりみだれ ころもにおわせ
 たびのしるしに)

意味・・引馬野の色づいた榛(はんのき)の原よ。その中で、
    みんな入り乱れて衣を染めなさい。旅の記念に。

 注・・引馬野=浜松市曳馬町付近。
    榛(はんのき)=実や樹皮は染料になる。
    にほふ=色の美しいこと。
    にほわせ=色を移す。染め付ける。

たのしみは 春の桜に 秋の月 夫婦仲よく 三度くふめし
                 四方赤良(よもあから)

(たのしみは はるのさくらに あきのつき ふうふなかよく
 さんどくうめし)

意味・・春の桜、秋の月、夫婦仲むつまじく三度三度食う飯。
    不自由な田舎に住んでいても、けっこう楽しい生活
    があるものだ。

    題は「田舎興(いなかのきょう)」。
    この歌は、
    後世の橘曙覧(たちばなあけみ)の「たのしみは妻子
    (めこ)むつまじくうちつどい頭並べて物を食らふ時」
    など、「たのしみは・・」で始まる五十二首の独楽吟
    を導きだすもと、と言われています。

菜の花や 淀も桂も 忘れ水   言水(げんすい)

(なのはなや よどもかつらも わすれみず)

意味・・東山からはるか西南の方角を眺めると、そこは一面の
    菜の花で埋め尽くされている。いつもなら見えるはず
    の淀川や桂川の流れも、野中の忘れ水のように、その
    花々の下に隠れてしまって見えない。

    前書きは「東山の亭にて」です。
    広い地域全体が菜の花に埋め尽くされた情景の句です。

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