名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2008年08月

いにしへの 難波のことを 思ひいでて 高津の宮に
月のすむらん       源師頼(みなもとのもろより)

(いにしえの なにわのことを おもいいでて たかつ
 のみやに つきのすむらん)

意味・・往古のどんなことを思い出して、難波の
    高津の宮では月が澄んで光っているのだ
    ろうか。

    人は今の月しか見られないが、月は往古か
    らの人々の姿をを見続けている事を詠んだ
    歌です。
    
 注・・難波=難波に「何」の意を掛ける。
    高津の宮=仁徳天皇の皇居があった。
    すむ=「澄む」と「住む」を掛ける。

天の原 振り放け見れば 白真弓 張りて懸けたり
夜道はよけむ    間人大浦(はしひとのおおうら)

(あまのはら ふりさけみれば しろまゆみ はりて
 かけたり よみちはよけん)

意味・・大空を振り仰いで見ると、三日月が白木の弓
    を張ったように空にかかっている。このぶん
    だと夜道はよいだろう。

    夕方から夜にかけて道を急ぐ人の心を詠んだ
    歌です。

 注・・白真弓=白木の弓。三日月を弦を張った弓に
        たとえる。

いづくにも 今宵の月を 見る人の 心やおなじ 
空にすむらん         藤原忠教(ふじわらただのり)

(いずくにも こよいのつきを みるひとの こころやおなじ
 そらにすむらん)

意味・・どこでも今夜の望月を眺めている人の心は、
    同じ空のもとにあって、月のように澄んで
    いるだろうか。

    月自体ではなく、それを見る人の心に焦点を
    合わせて、望月の明月を詠んだものです。

 注・・今宵の月=明月(澄み渡った明るい月)をさす。
    すむ=月光が澄むと人の心が澄むと住むを掛
       ける。

我が命の 全けむ限り 忘れめや いや日に異には
思ひ増すとも          笠女郎(かさのいらつめ)

(わがいのちの またけん かぎり わすれめや いやひ
 にけには おもいますとも)

意味・・私がこの世に生きている限り、あの方を
    忘れる事があろうか。日増しにますます
    恋しさの募ってゆく事はあっても。

 注・・全けむ限り=無事である限り。
    いや日に異(け)に=日増しに、日毎に。

骨をつみ 血しほ流しし もののふの おもかげうかぶ
赤川の水            浅井冽(あさいれつ)

(ほねをつみ ちしおながしし もののふの おもかげ
 うかぶ あかがわのみず)

意味・・川中島の戦いで川が真っ赤になったというので、
    この名がついた赤川の流れを見ていると、骨が
    積まれ血が流れ込むような激しい戦いぶりが思
    われてくる。

    往古より肥沃の地、川中島はそれが故に戦国の
    豪族の争奪の的として幾多の戦いの場となった。
    武田信玄と上杉謙信の戦いは前後10年に及んだ。
    永禄四年、1561年には両軍の死者は八千人を数
    え、屍は山を築き河川は血に染まった。
    この兵どもの夢の跡を偲び詠まれた歌です。

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