名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2008年10月

鶉鳴く 真野の入江の 浜風に 尾花なみよる
秋の夕暮れ 
          源俊頼(みなもとのとしより)
          (金葉和歌集・239)
(うずらなく まののいりえの はまかぜに おばな
なみよる あきのゆうぐれ)

意味・・鶉が悲しげに鳴いている真野の入江に吹く
    浜風によって、尾花が波うつようになびい
    ている秋の夕暮れだなあ。

    薄の尾花に鶉の声を配して、秋の夕暮れの
    物寂しい情景を詠んでいる。

 注・・鶉鳴く=万葉時代の表現で、恋人に捨てら
      れて泣く女性を暗示し、寂しさが伴う。
    真野=滋賀県大津市真野町。
    尾花=薄の異名。

作者・・源俊頼=1055~1129。左京権大夫・従四位上。

花の色は 心のままに なれにけり ことしげき世を 
いとふしるしに          兼好法師(けんこうほうし)

(はなのいろは こころのままに なれにけり ことしげきよを
 いとふしるしに)

意味・・桜の花の美しさには思うままに十分親しんだことだ。
    わずらわしい事の多い世間を嫌って出家した甲斐が
    あって。

    いやでたまらない会社を辞めた時のような気持を詠
    んでいます。
    

 注・・ことしげき世=事繁き世、「事」は政務や事務の仕事、
      「繁き」はあわただしいの意、官人として生きる
      社会のわずらわしさ。兼好は蔵人の地位であった。
    いとふ=嫌う、ここでは世を嫌って出家すること。
    しるし=甲斐がある、効果。

月は秋と 思ふりにし 空ながら 今さらしなに おどろかれぬる
                     慈円(じえん)

(つきはあきと おもいふりにし そらながら いまさらしなに
 おどろかれぬる)

意味・・月はとりわけ秋のものだと、以前から思って
    きた空ではあるものの、今更のように更科の
    山に出た月の明るさに驚いたことだ。

 注・・今さらしなに=「今更」と「更科」を掛ける。
      更科は長野県更級郡で月の名所。

あはづ野の おばなが下に 吹きこめて 風に浪こす 山おろしかな
                藤原良経(ふじわらよしつね)

(あわずのの おばながしたに ふきこめて かぜになみこす
 やまおろしかな)

意味・・山颪の風が、粟津野に咲き乱れた尾花の下に
    吹き込められて、風の上を白波が越えている
    ように見えるよ。

    風が尾花を波打たせあたかも琵琶湖の白波の
    ように見える風景を詠んだ歌です。

 注・・あはづ野=滋賀県大津市粟津町、琵琶湖湖畔。
    おばな=尾花、薄のこと。

散る花を なげきし人は このもとの 淋しきことや
かねて知りけむ      紫式部(むらさきしきぶ)

(ちるはなを なげきひとは このもとの さびしきことや
 かねてしりけん)

意味・・夫は常々、この桜が散るのを惜しがったものです。
    花(自分)なき後の、子供達の行く末を案じてい
    たのでしょう。

    夫の藤原宣孝(のぶたか)が亡くなった後、庭の桜
    が見事に開花した時に詠んだ歌です。

 注・・このもと=木の下。転じて、たよる人。
    淋しい=寂しい、経済的に貧しい。

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