名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2008年12月

年ふれば 我がいただきに をく霜を 草の上とも 
思ひけるかな       藤原仲実(ふじわらのなかさね)

(としふれば わがいただきに おくしもを くさのうえとも
 おもいけるかな)

意味・・年をとって、私の頭は霜のように白髪となったが、
    霜は草の上に置いてあって、私には無縁なものと
    思っていましたよ。

    相応の年齢になって、増えた白髪の戸惑いを詠ん
    います。

 注・・いただきにをく霜=霜は白髪の比喩。

世の中は 夢か現か 現とも 夢とも知らず ありて
なければ               
              詠人知らず (古今集・942)

(よのなかは ゆめかうつつか うつつとも ゆめとも
 しらず ありてなければ)

意味・・この世の中の一切のものは、はかない夢なのか、
    確かな現実なのか。現実とも夢とも区別がつか
    ない。存在していて、同時に存在していないと
    思われるから。

    過去の苦しい思いは悪夢というように、過去の
    事はもう現在は実在しない、実在していたが今
    は夢という事もできる。
    現状は苦しいという存在がある。この苦しさか
    ら逃げたいが、この思いははかない夢のように
    終わってしまう。
    嬉しいことは夢でなければ良いと思うし、失敗
    した時や身内の人を亡くした時は夢であって欲
    しいという気持がある。
    このような事を詠んだ歌です。

風をいたみ 沖つ白波 高からし 海人の釣舟 浜に帰りぬ
                   角麻呂(つのまろ)

(かぜをいたみ おきつしらなみ たかからし あまの
 つりぶね はまにかえりぬ)

意味・・風が激しくて沖の白波が高く立っているらしい。
    海人の釣舟は皆浜に帰って来てしまった。

    漁師が漁を出来ずに残念がっている姿を詠んで
    います。

 注・・いたみ=「・・(を)+形容詞の語幹(いた)+み」
     は、原因・理由を表す。・・が・・なので。
     「いたし」は、程度が甚だしいこと。ここでは
     (風が)激しいで、の意。
    海人=漁業に従事する人。漁師。
     

奥山の 岩垣もみぢ 散りはてて 朽葉がうへに
雪ぞつもれる       大江匡房(おおえのまさふさ)

(おくやまの いわねもみじ ちりはてて くちばがうえに
 ゆきぞつもれる)

意味・・奥深い山の岩垣の紅葉はすっかり散って、朽
    葉の上に雪が積っている。
  
    人知れず紅葉は散り、人知れず雪が降る様を
    読んだ歌です。

 注・・岩垣もみぢ=四方を囲むように、岩の壁をに
      這う葛の類の紅葉。
      

我が恋は 松を時雨の 染めかねて 真葛が原に
風さわぐなり             慈円(じえん)

(わがこいは まつをしぐれの そめかねて まくずが
 はらに かぜさわぐなり)

意味・・私の恋は、松を時雨が紅葉させることが出来ない
    でいるように、思う人をなびかせることが出来ず、
    真葛が原に、葛の葉の裏を白々と見せながら風が
    騒いでいるように、恨みがましく心を騒がせてい
    ることだ。

 注・・松を時雨の染めかねて=常緑で時雨も染めて紅葉
      出来ない「松」に、なびかせることの出来な
      い恋人を暗示し「時雨」を自分に暗示。
    真葛=真は美称の語、葛はマメ科の植物で裏は白
      っぽい。風が吹いて葛が白っぽい裏を見せる
      ので、恨み(裏見)で心の落ち着かない状態を
      暗示。

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