名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2009年07月

めづらしき 光さしそふ さかづきは もちながらこそ
ちよもめぐらめ       紫式部(むらさきしきぶ)

(めずらしき ひかりさしそう さかずきは もちながら
 こそ ちよもめぐらめ)

詞書・・後一条院がお生まれになってお七夜に
    人々が参会して、女房に杯を出せと言
    われて詠んだ歌です。

意味・・新たに美しい栄光がさし加わったよう
    なこの若宮のご誕生日のご祝宴の杯は、
    下にもおかず、つぎつぎと手から手へ
    と捧げ持ちながら、望月同様、欠ける
    事なく、千代まで経めぐることでござ
    いましょう。

    祝賀の歌です。

 注・・後一条院=1008~1036。29歳。68代
      天皇。
    七夜=子供が生まれて七日目の祝いの夜。
    めづらしき=賞美するのにふさわしい。
      すばらしい。目新しい。    
    さかづき=「杯」に「栄月」を掛ける。
    もちながら=「持ちながら(杯を手に持っ
      たままで)」と「「望(月)ながら(望
      月のままで)」を掛ける。
    めぐらめ=順繰りにすすむ、時が経過する。

ありとても たのむべきかは 世の中を しらすものは
朝がほの花         和泉式部(いすみしきぶ)

(ありとても たのむべきは よのなかを しらす
 ものは あさがおのはな)

詞書・・朝顔を詠んだ歌。

意味・・いま元気だといっても、いつまでもこの世
    にあるものとはあてにする事は出来はしな
    い。そのように世の中のはかないことを知
    らせるものは、朝だけが命のはかない朝顔
    の花である。

 注・・あり=物・事・所などがある。健在である。
    世の中=人の世、男女の仲。
    しらす=知らす、「はかない事」を補う。
    あさがお=朝顔、槿(あさがお)。「朝顔の
      花一時」「槿花一日の栄」(意味は下記
      参照)のことばがある。

作者・・和泉式部=年没年未詳、977頃の生まれ。
      朱雀天皇皇女昌子内親王に仕える。
      「和泉式部日記」を書く。

槿花一日の栄(きんかいちじつのえい)

意味・・木槿(むくげ)の花は朝開いて夕方にはしぼむ。
    そのはかなさを人の世の栄華のはかなさに
    たとえたもの。

涼しさを 我が宿にして ねまるなり 芭蕉(ばしょう)

(すずしさを わがやどにして ねまるなり)

意味・・この涼しさを、すっかり一人占めにして、 
    私はのんびりとからだを横にしていること
    です。

    山形の尾花沢で詠んだ句です。芭蕉ののん
    びりしたさまを詠んでいます。

 注・・我が宿にして=独り占めにして。
    ねまる=身体を楽にして座ったり横になる
      こと。新潟地方の方言。

作者・・松尾芭蕉=1644~1694。「奥の細道」、「
      笈(おい)の小文」など。

値なき 宝といふとも 一杯の 濁れる酒に
あにまさめやも    大伴旅人(おおとものたびびと)

(あたいなき たからというとも ひとつきの にごれる
 さけに あにまさめやも)

意味・・値をつけようがないほど貴い宝珠でも、
    濁り酒一杯にどうして勝るといえようか。

    気持ちが大きくなる酒の効用を詠んで
    います。

 注・・値なき宝=仏法用語で無上の法の例え。
      値をつけようが無いほどの宝。

作者・・大伴旅人=665~720。大納言、従二位。

一とせの 過ぎつるよりも たなばたの こよひをいかに
明しかぬらん             小弁(こべん)

(ひととせの すぎつるよりも たなばたの こよいを
 いかに あかしかぬらん)

詞書・・七月六日(七夕の前夜)に読んだ歌。

意味・・逢う瀬はいよいよ明日になったが、去年の
    七月七日から今日までの一年間のせつなさ
    よりも、織女星は、今宵一夜を、どんなに
    待ち遠しい思いで明かしているのであろう
    かなあ。

 注・・一とせ=去年の七月七日より今年の七月六
      日までの一年間。
    たなばた=七夕、機(はた)を織る女性、
      織女星の異名。

作者・・小弁=生没年未詳。越前守藤原壊伊(かねま
      さ)の娘。

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