名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2009年08月

身をつめば 入るもをしまじ 秋の月 山のあなたの
人も待つらん      永源法師(えいげんほうし)

(みをつめば いるもおしまじ あきのつき やまの
 あなたの ひともまつらん)

意味・・「我が身をつねって人の痛さを知る」という
    わけで、月の入るのも惜しいとは思うまい。
    この美しい秋の月を山の向こう側の人も、私
    同様に待っているだろうから。

 注・・身をつめば=身を抓めば、我が身を抓(つ)ま
      んで人の痛さを知るの意。
    入るもおしまじ=月が山の陰に隠れても惜し
      まない。

作者・・永源法師=生没年未詳。観世音寺の僧。

おほかたの 秋来るからに わが身こそ かなしきものと
思ひ知りぬれ             
                 読人知らず
                 (古今和歌集・185)

(おおかたの あきくるからに わがみこそ かなしき
 ものと おもいしりぬれ)

意味・・誰の上にも来る秋が来ただけなのに、私の
    身の上こそ誰にもまして悲しい事だと思わ
    れて来る。

    実りの秋、収穫の秋、清々しく気持ちの良
    い秋のはずなのだが。主役を終え一線を退
    いた者にしては、草木が枯れ始め寂しく、
    また厳しい冬が近づく事が、自分の身体に
    あわさって悲しくなって来るのだろうか。    

 注・・おほかた=世間一般。普通であること。
    わが身こそ=私の身の上こそ。「こそ」は
      「おほかた」の人の中でも自分一人が
      特に。

我かくて 憂き世の中に めぐるとも たれかは知らむ
月の都に              源氏物語・浮舟

(われかくて うきよのなかに めぐるとも たれかは
 しらん つきのみやこに)

詞書・・不本意ながら生き長らえて(三角関係に苦悩
    して自殺をはかるが助けられて)、小野の地
    で月を見て詠む。

意味・・私がこうして情けない世の中に巡り巡って、
    生き長らえて月を見ているとは、同じ月が
    照らしているであろう都では誰が知るだろ
    うか。

    自殺を図って助けられたが、苦悩は去らず
    困惑している気持ちを誰も知ってくれる人
    はなく、寂しく月を見ている気持ちを詠ん
    でいます。    
   
 注・・小野=京都市左京区上高野から大原の地。

人の世の 憂きをあはれと 見しかども 身にかへむとは
思はざりしを             源氏物語・夕霧

(ひとのよの うきをあわれと みしかども みにかえん
とは おもわざりしを)

意味・・他人の夫婦仲の情けなさをしみじみ気の毒に
    見たことはりますが、自分の身に換えて袖を
    涙で濡らそうとは思いもかけませんでした。

 注・・人=他人。
    世=世の中、男女の仲、夫婦の仲。

せきもあへぬ 涙の川は はやけれど 身のうき草は
流れざりけり     源俊頼(みなもとのとしより)

(せきもあえぬ なみだのかわは はやけれど みの
 うきくさは ながれざりけり)

意味・・せき止められない我が涙は川となってたぎ
    り流れているが、浮草のような我が身の憂
    さは、ながれずにそのままでいることよ。

    身分の低い人に官位昇進の遅れをとって、
    嘆いた歌です。いくら泣いても憂さの晴れ
    ないくやしさの気持ちを詠んでいます。
       
 注・・あへぬ=敢へぬ、たえる、こらえる。
    身のうき草=「浮草」に「憂き」を掛ける。
    流れざり=憂さの消えないことの比喩。

作者・・源俊頼=1055年頃生。75歳。左京権太夫。
      従四位。

このページのトップヘ