名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2009年09月

いかなれば おなじ時雨に 紅葉する ははその杜の
うすくこからん    藤原頼宗(ふじわらのよりむね)

(いかなれば おなじしぐれに もみじする ははその
 もりの うすくこからん)

意味・・同じ時雨によって紅葉するものなのに、
    どういうわけで、柞(ははそ)の森は薄か
    ったり濃かったりするのだろうか。

    参考歌として良寛の歌に「いかなれば同
    じ一つに咲く花の濃くも薄くも色を分く
    らむ」があります。(意味は下記参照)

 注・・時雨=秋から冬にかけて降ったり止ん
      だりする小雨。
    ははその杜=柞の森。柞はイヌブナ科の
      落葉高木。コナラ、クヌギなど。

作者・・藤原頼宗=993~1065。藤原道長の次男。
      従一位右大臣。堀川右大臣と呼ばれ
      和歌が巧みであった。

参考歌です。

いかなれば 同じ一つに 咲く花の 濃くも薄くも
色を分くらむ               良寛

(いかなれば おなじひとつにさくはなの こくもうすくも
 色をわくらん)

意味・・どうしたことで、同じ一つの時期に咲く花が、
    濃い色や薄い色に色を分けて咲くのだろうか。    

 注・・いかなれば=どうして。

蛇足・・人も持ち場や立場で、また得て不得手により
    色々の花を咲かせるものである。


年へぬる 秋にもあかず 鈴虫の ふりゆくままに
声のまされば     藤原公任(ふじわらのきんとう)

(としへぬる あきにもあかず すずむしの ふりゆく
 ままに こえのまされば)

意味・・幾年も経った秋にもいやにならない事だ。
    鈴虫は鈴を振るように鳴いて、年老いて
    行くにつれて声がよりよくなるのだから。

    自分自身の気持ちであり、年々良くなっ
    て行く我が人生の喜びを詠んでいます。   

 注・・としへぬる=年経ぬる。幾年も経た。
    ふりゆく=鈴を振って鳴く「振り」と
      年老いるの「古り」を掛ける。

作者・・藤原公任=966~1041。正二位権大納言。
      「和漢朗詠集」等の和歌の編著も多い。
      中古三十六歌仙の一人。

菊の香やならには古き仏達   芭蕉(ばしょう)

(きくのかや ならにはふるき ほとけたち)

意味・・昨日から古都奈良に来て、古い仏像を拝んで
    まわった。おりしも今日は重陽(ちょうよう)
    で、菊の節句日である。家々には菊が飾られ
    町は菊の香りに満ちている。奥床しい古都の
    奈良よ。慕(した)わしい古い仏達よ。

    重陽の日(菊の節句・陰暦9月9日)に奈良で詠
    んだ句です。菊の香と奈良の古仏の優雅さと
    上品さを詠んでいます。

作者・・松尾芭蕉=1644~1694。「奥の細道」、「笈
      (おい)の小文」など。

きりぎりす 鳴くや霜夜の さ莚に 衣片敷き
ひとりかも寝ん    藤原良経(ふじわらのよしつね)

(きりぎりす なくやしもよの さむしろに ころも
 かたしき ひとりかもねん)

意味・・こおろぎの鳴く、霜の降りる寒い夜、莚
    の上に衣の片袖を敷いて一人寂しく寝る
    のであろうか。

    「きりぎりす」や「さ莚」の語から山里
    での一人住みや旅の仮寝が思われる。
    恋の情調を漂わせながら、暮れ行く秋の
    寂しさ、孤独な一人寝のわびしさを詠ん
    でいます。なお、この歌を詠む直前に妻
    に先立たれたと言われています。

 注・・きりぎりす=今のこおろぎ。
    さ莚=さは接頭語。藁や菅などで編んだ
      粗末な敷物。「寒し」を掛ける。
    衣片敷き=昔、共寝の場合は、互いの衣
      の袖を敷き交わして寝た。片敷きは
      自分の衣の片袖を下に敷くことで、
      一人寝のこと。   

作者・・藤原良経=1169~1206。従一位太政大臣。
      新古今集の仮名序を執筆。

朽ちもせぬ ながらの橋の はし柱 久しきことの
見えもするかな      平兼盛(たいらのかねもり)

(くちもせぬ ながらのはしの はしばしら ひさしき
 ことの みえもするかな)

題意・・摂政藤原兼家の60歳の祝賀の宴で、
    屏風の長柄橋の絵を見て詠んだ歌。

意味・・いつまでたっても朽ちない長柄の橋
    の橋柱の久しいように、あなたさま
    の行く末も久しく末長く続くことが
    見られもすることでございます。

 注・・ながらの橋=大阪市大淀区の淀川に
      架かっている橋。河口が広く流
      れが変わるためよく決壊し修理
      繰り返された。
    はし柱=橋を支える堅固な主柱。

作者・・平兼盛=~990。駿河守。36歌仙の一人。
    

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