名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2009年12月

秋萩に 置きたる露の 風吹きて 落つる涙は
留めかねつも     山口女王(やまぐちのおおきみ)

(あきはぎに おきたるつゆの かぜふきて おつる
 なみだは 留めかねつも)

詞書・・大伴家持に贈った歌。

意味・・萩の花に宿っている露が風に散るように、
    私があなた恋しさに流す涙は、はらはらと
    こぼれ落ちて留めることが出来ません。
    
    悲恋の涙を玉の露のように美しく詠んだ歌
    です。

作者・・山口女王=伝未詳。

東路の 道の冬草 茂りあひて 跡だに見えぬ 
忘水かな      康資王母(やすすけおうのはは)

(あずまじの みちのふゆくさ しげりあい あとだに
 みえぬ わすれみずかな)

意味・・東国の道の冬草が茂りあって、人の足跡
    さえ見えないような忘れ水であることよ。

    草深い東国の忘れ水に、東国にいて都の
    友から忘れられる自分を暗示した歌です。

 注・・東路=東国。関東地方。
    跡だに=人の足跡さえ。手紙も貰えない
     ことを暗示している。
    忘水=野中に隠れて人に知られない水。
     作者自身を暗示している。

作者・・康資王母=生没年未詳。筑前守高階成順
     の娘。

うづくまる薬の下の寒さかな
           内藤丈草(ないとうじょうそう)

(うずくまる くすりのもとの さむさかな)

前書・・ばせを翁の病床に侍りて。

意味・・師芭蕉の病状は重い。師の病を案じながら
    火鉢の薬釜のそばでうずくまっていると、
    寒さがひしひし迫ってくる。また心配の為
    心も寒い。

    芭蕉臨終の数日前の吟です。

 注・・うづくまる=しゃがんで丸くなること。
    寒さ=冬の気温の寒さだけでなく、心理的
     な寒さも含めている。心の寒さ。

作者・・内藤丈草=1662~1704。尾張犬山藩士。後に
     遁世(とんせい・世を逃れ隠居すること)した。

わがまたぬ 年は来ぬれど 冬草の かれにし人は
おとづれもせず 
         凡河内躬恒(おうしこうちのみつね)

(わがまたぬ としはきぬれど ふゆくさの かれにし
 ひとは おとずれもせず)

意味・・私が待ってもいない新年はもはや目の先
    まで来てしまったが、今時の枯葉同様に
    離(か)れてしまったお方は、訪問はおろか
    お手紙も下さらない。

    老人となったことを意識した歌です。

 注・・冬草の=「かれ」に掛かる枕詞。
    かれ=「枯れ」と「離れ」を掛ける。
    おとづれ=便りをする。訪問をする。

作者・・凡河内躬恒=生没未詳、900年前後に活躍
     した人。新古今集の撰者。

淋しさに 煙をだにも 絶たじとや 柴折りくぶる
冬の山里         和泉式部(いずみしきぶ)

(さびしさに けむりをだにも たたじとや しばおり
 くぶる ふゆのやまざと)

意味・・淋しいあまりに、せめて火(煙)だけでも
    絶やすまいとしてであろうか、小さい雑
    木(ぞうき)を折りくべて暖をとっている
    冬の山里の家の人たちよ。

 注・・煙をだにも=せめて煙なりと、せめて火
     なりと。
    柴=山野に生じる小さな雑木。

作者・・和泉式部=987~?。「和泉式部日記」等。

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