名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2010年02月

ほのぼのと 春こそ空に 来にけらし 天の香具山
霞たなびく        
            後鳥羽院(新古今和歌集・2)

(ほのぼのと はるこそそらに きにけらし あまの
 かぐやま かすみたなびく)

意味・・ほんのりと春が空に来ているらしい。今、
    天の香具山には、あのように霞が棚びいて
    いる。

    香具山を中心に、天地に広がってきている
    春の気配を詠んでいます。

 注・・ほのぼのと=ほんのりと。
    来にけらし=来たらしい。
    天の香具山=奈良県橿原市にある山。「天」
     は美称。

作者・・後鳥羽院=後鳥羽院。1189~1239。82代天皇。
     鎌倉幕府の打倒を企て敗れて隠岐に流される。
     「新古今集」の撰集を命じる。

父母が 頭掻き撫で 幸くあれて 言ひし言葉ぜ 
忘れかねつる    丈部稲麻呂(はせべのいなまろ)

(ちちははが かしらかきなで さくあれて いいし
 ことばぜ わすれかねつる)

意味・・お父さんお母さんが、かわるがわるこの頭を
    掻き撫でて、達者でな、と言ったあの言葉が
    今も忘れられない。

    防人として任地に行って、別れ際の父や母の
    しぐさや言葉を通して、望郷の思いを詠んで
    います。

 注・・幸(さ)くあれて=幸(さき)くあれと。東国の
    方言。
言葉ぜ=言葉ぞ。東国の方言。

作者・・丈部稲麻呂=東国の防人。

鶯の 谷よりいづる 声なくば 春来ることを
誰か知らまし       大江千里(おおえのちさと)

(うぐいすの たによりいずる こえなくば はるくる
 ことを たれかしらまし)

意味・・長い冬から開放され、谷間を出て梢にさえずる
    鶯の声を聞かないで、誰が春の来ることを知る
    ことが出来ようか。

作者・・大江千里=9世紀後半から10世紀前半に活躍した
     人。在原業平の甥。儒家。

出典・・古今和歌集・14。

見わたせば 山もとかすむ 水無瀬川 夕べは秋と
なに思ひけむ       後鳥羽院(ごとばいん)

(みわたせば やまもとかすむ みなせがわ ゆうべは
 あきと なにおもいけん)

意味・・見渡すと、山の麓がかすんで、そこを水無瀬川
    が流れている眺めは素晴らしい。夕べの眺めは
    秋が素晴らしいと、どうして思ったのであろう
    か。

 注・・山もと=山の麓。
    水無瀬川=大阪府三島郡を流れる川。淀川の
     支流。
    夕べは秋と=夕暮れの眺めは秋が優れていると。

作者・・後鳥羽院=~1239。60歳。82代の天皇。鎌倉
     幕府打倒を企てたが、破れて隠岐に流される。

麦蒔や百まで生きる貌ばかり   蕪村(ぶそん)

(むぎまきや ひゃくまでいきる かおばかり)

意味・・小春日の暖かい初冬の麦蒔き作業。百姓たちは
    いずれも健康そのもので、百まで生きそうな顔
    つきの老人ばかりだ。

 注・・貌(かお)=顔つき。

作者・・蕪村=1716~1783。与謝蕪村。



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