名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2010年04月

暮れてゆく 春のみなとは 知らねども 霞に落つる
宇治の柴舟       寂連法師(じゃくれんほうし)

(くれてゆく はるのみなとは しらねども かすみに
 おつる うじのしばふね)

意味・・終わりになって去っていく春の行き着く所は
    知らないが、今、霞の中に落ちるように下っ
    ていく宇治川の柴舟とともに、春が去って行
    く感じがする。

    霞がかかり長閑な宇治川の柴舟に、去り行く
    春の寂しさを詠んでいます。

 注・・暮れてゆく=春がだんだん終わりに近づいて
     いく。
    春のみなと=春の行き着く所。
    宇治の柴舟=宇治川を下る、柴を積んだ舟。    

作者・・寂連法師=1139~1202。従五位上・中務小輔。
     33歳頃に出家する。「新古今集」の撰者。

わが宿の 池の藤波 咲きにけり 山ほとどぎす
いつか来鳴かむ         読人知らず

(わがやどの いけのふじなみ さきにけり やま
 ほとどぎす いつかきなかん)

意味・・我が家の庭先の池のほとりの藤の花が
    みごとに咲いた。山ほとどぎすはいつ
    ここに来て鳴いてくれるだろうか。

作者・・柿本人麻呂とも言われている。

花の色は 昔ながらに みし人の 心のみこそ
うつろひにけれ    元良親王(もとよししんのう)

(はなのいろは むかしながらに みしひとの こころ
 のみこそ うつろいにけれ)

意味・・花の色の美しさは昔のままなのに、かって愛し
    あった人の心だけは変わってしまったことだ。

作者・・元良親王=890~973。色好み・風流人として
     「大和物語」や「徒然草」に登場する。

山吹は 撫でつつ生ほさむ ありつつも 君来ましつつ
かざしたりけり
         置始連長谷(おきそめのむらはつせ)

(やまぶきは なでつつおおさん ありつつも きみ
 きましつつ かざしたりけり)

意味・・この山吹は、これからもいつくしんで育てま
    しょう。このように咲いたからこそ、あなた
    がここにおいでになって、髪飾りにして下さ
    ったのですから。

    またの来訪を促がした歌です。    

 注・・撫でつつ=撫でるように可愛がる。
    生ほさむ=「生ほす」は育てる、草木を育てる。
    ありつつ=生き続けてる。咲き続ける。
    かざし=挿頭。草木の花や枝を頭に挿して飾る
     こと。

作者・・置始連長谷=伝未詳。大伴家持の庄(しょう・
     田畑)の番人。750年頃の人。

桜花 今ぞ盛りと 人は言へど 我は寂しも
君としあらねば  大伴池主(おおとものいけぬし)

(さくらばな いまぞさかりと ひとはいえど われは
 さびしも きみとしあらねば)

意味・・桜の花は今が真っ盛りだと人は言いますが、
    私の心は少しも楽しくありません。あなたと
    ご一緒ではないので。

 注・・君とし=他ならぬ君と。「し」は強調の助詞。
     この歌の君は歌人の大伴家持。

作者・・大伴池主=生没年未詳。757年の変に連座して
     投獄される。

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