名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2011年02月

いかにせん さらでうき世は なぐさまず たのめし月も
涙おちけり
             藤原俊成(ふじわらとしなり)
             (千載和歌集・32)

(いかにせん さらでうきよは なぐさまず たのめし
 つきも なみだおちけり)

意味・・どうしたらよいであろうか。そうでなくてもこの
    つらい世の中は慰められることがない。慰められ
    るのではないかとあてにしていた月を見ても涙が
    落ちてくるばかりだ。

 注・・さらで=然らで。そうでなくて、あらためて意識
     しなくても。
    たのめし=頼めし。あてにする、期待する。

作者・・藤原俊成=1114~1204。正三位・皇太后宮大夫。
     「千載和歌集」の撰者。家集は「俊成家集」。


空も海も ひとつにかすむ 浪ぢかな あまのつり舟 
かへるかりがね
             藤原良経(ふじわらのよしつね)
             (南海漁父山樵客百番歌会・12)

(そらもうみも ひとつにかすむ なみじかな あまの
 つりふね かえるかりがね)

意味・・空も海もひとつに融け合って霞んでいる波路だなあ。
    海上の漁夫の釣り舟も、春天を北の国に帰り行く雁
    の姿も霞に融けこんでいる。

 注・・浪ぢ=波路。船が行き交う路。
    あま=海人。漁夫、漁師。

作者・・藤原良経=1169~1206。摂政太政大臣。


いそのかみ 古き都を 来て見れば 昔かざしし 
花咲きにけり
             読人知らず
            (新古今和歌集・88)

(いそのかみ ふるきみやこを きてみれば むかし
 かざしし はなさきにけり)

意味・・石上(いそのかみの)古い都の跡を来て見ると、
    昔、その都の大宮人達が、髪や冠に挿して飾っ
    た花が、色も変らずに咲いていることだ。

 注・・いそのかみ=石上。奈良県天理市布留町一帯の
     地。「古き」の枕詞。
    古き=「布留」を掛ける。

参考としての漢詩です。

平城(なら)を過ぎる   菅三品(かんさんぽん)

緑草(りょくそう)は如今(いま)麋鹿(びろく)の苑(その)
紅花(こうか)は定めて昔の管弦の家

意味・・新緑の青草の丘のほとり、今は鹿の遊ぶ苑と
    なりはてているが、紅の花の咲くあたりは、
    さだめし、あおによし奈良の都のありし日に、
    管弦を奏した家の跡でもあったであろう。

 注・・麋鹿(びろく)=大鹿と小鹿。


をそろしや 木曽の懸路の 丸木橋 ふみ見るたびに 
をちぬべきかな
             空人法師(くうにんほうし)
             (千載和歌集・1195)

(おそろしや きそのかけじの まるきばし ふみみる
 たびに おちぬべきかな)

詞書・・山寺にこもりて侍ける時、心ある文を女のしば
    しばつかはしければ、よみてつかはしける。

意味・・恐ろしいことだ、木曽の桟道の丸木橋は。踏ん
    でみる度毎に落ちてしまいそうだ。
    (文を見るたびに堕落しそうだ)。

 注・・懸路=木材で架けた棚のように造った路。桟道。
    丸木橋=加工なしの丸木を掛け渡した橋。
    ふみ=「踏み」と「文」を掛ける。
    心ある文=恋文。

作者・・空人=生没年未詳。法輪寺の僧。西行と親交。

そのかみの 人はのこらじ 箱崎の 松ばかりこそ 
われをしるらめ
            中将尼(ちゅうじょうあま)
            (後拾遺和歌集・1130)

(そのかみの ひとはのこらじ はこざきの まつばかり
 こそ われをしるらめ)

詞書・・幼くて父の供で筑前の国にいまして、年がたって
    から、成順(なりのぶ)が筑前の国の守になってお
    りましたので、下向して詠んだ歌。

意味・・昔、幼い時に会った人は今は一人も残っていまい。
    この箱崎の松樹千年といわれる松だけが、年老い
    た私を知っているだろう。

 注・・そのかみ=昔、過去。
    人はのこらじ=人は亡くなって残っていない。
    箱崎=福岡市大字箱崎。ここに箱崎宮がある。
    成順(なりのぶ)=高階成順。作者の子。

作者・・中将尼=生没年未詳。筑前守高階成順の母。

このページのトップヘ