名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2011年03月

かくしつつ 遊び飲みこそ 草木すら 春は生ひつつ
秋は散りゆく
             坂上女郎(さかのうえいらつめ)
             (万葉集・995)

(かくしつつ あそびのみこそ くさきすら はるは
 おいつつ あきはちりゆく)

意味・・今宵はこうして楽しく遊んだり飲んだりして
    下さい。草や木でさえ、春には生い茂りなが
    ら秋にはもう散ってゆくのです。

    草木を例として人生の短さを述べ、生きてい
    る間は楽しく遊び飲もうという享楽的な心を
    歌っています。

作者・・坂上女郎=生没年未詳。大伴旅人の異母妹。


わが恋は 吉野の山の おくなれや 思ひいれども
あふ人なし
          藤原顕季(ふじわらのあきすえ)
          (詞花和歌集・212)

(わがこいは よしののやまの おくなれや おもい
 いれども あうひとなし)

意味・・私の恋は吉野の山の奥のようなものだからで
    あろうか、吉野の山奥に入っても人に出会わ
    ないように、私もいくら深く愛しても逢い契
    ろうとする人はいない。

 注・・なれや=・・だからであろうか。
    あふ=会ふ、逢う。「会う・人と出会う」と
     「逢う・結婚するの意」を掛ける。

作者・・藤原顕季=1055~1123。修理大夫・正三位。



百千鳥 さえづる空は 変らねど 我が身の春は 
改まりつつ
              後鳥羽院(ごとばいん)
              (遠島御百首・4)

(ももちどり さえずるそらは かわらねど わがみの
 はるは あらたまりつつ)

意味・・いろいろな小鳥がさえずる空はなんの変りもないが、
    我が身に訪れる春は、今までと大きく相違していて
    寂しいものだ。

    承久の乱(1221)によって隠岐(おき)に配流されて詠
    んだ歌であり、帰京を待ち望む孤独な心情です。

 注・・百千鳥=多くの鳥。
    改まり=新しく変る。

作者・・後鳥羽院=1180~1239。82代天皇。承久の乱で鎌倉
     幕府の北条義時に敗れ隠岐に流される。


むらぎもの 心楽しも 春の日に 鳥の群れつつ
遊ぶを見れば
           良寛(りょうかん)
           (良寛歌集・722)

(むらぎもの こころたのしも はるのひに とりの
 むれつつ あそぶをみれば)

意味・・私の心は満ち足りて楽しくなって来る。この
    のどかな春の日に、小鳥たちが群がりながら
    遊んでいるのを見ていると。

 注・・むらぎも=「心」の枕詞。

作者・・良寛=1758~1831。

春なれや 名もなき山の 薄霞
                  芭蕉(ばしょう)
                  (野ざらし紀行)

(はるなれや なもなきやまの うすがすみ)

意味・・さすがにもう春だなあ。名も無い山々にまで、
    薄霞がかかって、まことに明るい景色だ。


作者・・芭蕉=1644~1694。「野ざらし紀行」「奥の細道」。


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