名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2011年05月

盃やなるとの入日渦桜
                 西鶴(さいかく)
                 (西鶴全句集・44)

(さかずきや なるとのいりひ うずざくら)

意味・・目の前に置かれた盃、珠塗りのかなり大きい盃で、
    内側に珍しい図柄の蒔絵が施してある。鳴門の海の
    入り日に名物の渦潮、それに鞍馬山の渦桜まで描き
    添えてある。下戸の自分でもこれには見とれてしま
    う。

 注・・渦桜=雲珠(うず)桜、鞍馬山の八重桜のこと。

作者・・西鶴=1642~1693。西山宗因に入門。談林派。
    「浮世草子」。

花鳥の 色にも音にも とばかりに 世はうちかすむ
春のあけぼの
           心敬(しんけい)
           (寛正百首・9)

(はなとりの いろにもねにも とばかりに よは
 うちかすむ はるのあけぼの)

意味・・春の曙の、あたり一面かすんだやさしい美しさは、
    花の色にも鳥の声にもたとえようがない程、心を
    温めてくれる美しさだ。

 注・・とばかりに=花鳥の色にも音にも及ばないほどに。

作者・・心敬=1406~1475。権大僧都。

振り放けて 三日月見れば 一目見し 人の眉引き
思ほゆるかも
           大伴家持(おおとものやかもち)
            (万葉集・994)

(ふりさけて みかづきみれば ひとめみし ひとの
 まよびき おもほゆるかも)

意味・・大空を振り仰いで三日月を見ると、ただ一目
    見た人の美しい眉が思われてなりません。

 注・・眉引(まよび)き=眉、まゆ墨で眉を書くこと。

作者・・大伴家持=718~785。大伴旅人の子。

恋しとは 誰が名づけけむ 言ならむ 死ぬとぞただに
いふべかりける
           清原深養父(きよはらのふかやぶ)
           (古今和歌集・698)

(こいしとは たがなづけけん ことならん しぬとぞ
 ただに いふべかりける)

意味・・愛(いと)しい人を慕うことを「恋しい」とは、誰が
    名づけた言葉なのであろうか。ずばり「死ぬ」と言
    えばいいのだ。

 注・・言ならぬ=言葉なのであろうか。
    ただに=ただちに、直接に。

作者・・清原深養父=930年頃活躍した人。清少納言の曾祖父。

もも鳥の 鳴く山里は いつしかも 蛙のこへと
なりにけるかな
              良寛(りょうかん)
              (良寛全歌集・83)

(ももとりの なくやまさとは いつしかも かわずの
 こえと なりにけるかな)

意味・・いろいろ多くの鳥が春になってさえずっていた
    この山里は、いつの間にか夏になって、蛙の声
    が耳に聞えるようになったものだなあ。

 注・・もも鳥=百鳥。数多くの鳥。

作者・・良寛=1758~1831。

このページのトップヘ