名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2011年07月

山かげや 岩もる清水の おとさえて 夏のほかなる
ひぐらしの声
            慈円(じえん)
            (千載和歌集・210)
(やまかげや いわもるしみずの おとさえて なつの
 ほかなる ひぐらしのこえ)

意味・・この山陰にいると、岩を漏れ落ちる清水の音も
    冷たく澄んで聞こえ、また夏とも思えぬ蜩の鳴
    き声までが聞えてくる。

作者・・慈円=1155~1225。天台座主、大僧正。

よきも着ず うまきも食はず 然れども 児等と楽しみ
心足らへり
              伊藤左千夫(いとうさちお)
              (左千夫歌集)
(よきもきず うまきもくわず しかれども こらと
 たのしみ こころたらえり)

意味・・よい着物も着ず、うまい物も食わない。そんな
    質素な生活をしているけれども、子供らと日々
    を楽しく暮らして、自分の心は満足している。

作者・・伊藤左千夫=1864~1913。小説「野菊の墓」。

吾が宿の いささ群竹 吹く風の 音のかそけき
この夕べかも
           大伴家持(おとものやかもち)
           (万葉集・4291)
(わがやどの いささむらたけ ふくかぜの おとの
 かそけき このゆうべかも)

意味・・そよそよと微(かす)かに音が聞えてくる。何だろう?
    そうだ、あれはこの邸に植えてある小さい群竹に吹く
    風の音なのだ!静かな寂しい夕暮れだなあ。

 注・・いささ群竹=ほんの小さな竹の茂み。
    かそけき=幽けき。光、色、音などが知覚出来るか
     出来ないさま。かすかに。

作者・・大伴家持=718~785。大伴旅人の子。



いたづらに 我が身もかくや はつせ山 けふの日も又
入あひのこえ
              後西天皇(ごさいてんのう)
              (万治御点)
(いたづらに わがみもかくや はつせやま けふの
 ひもまた いりあいのこえ)

意味・・何の甲斐も無く我が身もこうして果てるのか。
    初瀬山では今日という日も又夕暮れを向かえて
    入相の鐘の音が響いている。

 注・・いたづらに=何のかいもなく、無為に。
    かくやはつせ山=「かくや果つ」と「初瀬山」
     を掛ける。

作者・・後西天皇=1661~1665の天皇。 


うちなびく 草葉すずしく 夏の日の かげろふままに
風たちぬなり
             兼好法師(けんこうほうし)
             (兼好法師家集・96)
(うちなびく くさばすずしく なつのひの かげろう
 ままに かぜたちぬなり)

意味・・そよそよと草葉が風になびいて涼しい。夏の
    日がかげるにつれて風が出たようだ。

 注・・かげろふ=光がかげる、陰になる。
    なり=推定の助動詞。・・・のようだ。

作者・・兼好法師=1283年頃の生まれ、70歳くらい。
     「徒然草」。

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