名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2011年08月

行末は まだ遠けれど 夏山の 木の下陰ぞ 
立ちうかりける
           凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)
           (拾遺和歌集・129)
(ゆくすえは まだとおけれど なつやまの このした
 かげぞ たちうかりける)

意味・・これから行く先はまだ遠いけれど、夏山の木の下
    陰は、立ち去るのがなかなかつらいことだ。

作者・・凡河内躬恒=生没年未詳。古今集の撰者の一人。


さよふかき 岩井の水の 音きけば むすばぬ袖も
涼しかりけり
            源師賢(みなもとのもろかた)
            (後拾遺和歌集・233)
(さよふかき いわいのみずの おときけば むすばぬ
 そでも すずしかりけり)

意味・・夜が深いころ岩井の水の音を耳にすると、手で
    水をすくいあげない私の袖も涼しい思いがする
    ことだ。

 注・・さよ=さ夜。「さ」は接頭語。夜。
    岩井の水=岩の間から湧き出る冷水。
    むすばぬ=掬ばぬ。「むすぶ」は水を手ですくう
     こと。

作者・・源師賢=1035~1081。正四位下・蔵人頭。


奥山の おどろが下も 踏み分けて 道ある世ぞと 
人に知らせん
            後鳥羽院(ごとばいん)
            (新古今和歌集・1633)

意味・・奥山のいばらの生い茂った下をも踏み分けて行って、
    どのような所にも道がある世だと、人に知らせよう。

 注・・おどろ=いばら、藪(やぶ)。
    道=「正しい政道」を暗示。

作者・・後鳥羽院=1180~1239。承久の乱で隠岐に流される。
     「新古今和歌集」の撰集を命じる。


吹く風の 涼しくもあるか おのづから 山の蝉鳴きて
秋は来にけり
            源実朝(みなもとのさねとも)
            (金槐和歌集・189)
(ふくかぜの すずしくもあるか おのずから やまの
 せみなきて あきはきにけり)

意味・・吹く風は涼しいことだ。いつのまにか山の蝉が
    鳴き出して秋はやってきたのだなあ。

 注・・おのづから=自然と、いつしかと。

作者・・源実朝=1192~1219。28歳。鎌倉幕府三代将軍。
     「金槐和歌集」。



心より たぎつ岩波 音たてて わがまつかひの
秋風ぞふく
          尭胤法親王(ぎょういんほっしんのう)
          (文亀三十六番歌合)
(こころより たぎついわなみ おとたてて わがまつ
 かいの あきかぜぞふく)

意味・・激しく白波が音を立てて流れる。心から私の
    待つ甲斐があって秋風が吹いて来ることだ。

    本歌は伊勢物語・87番の次の歌で「待った
    甲斐がある」の意味を持たせています。

   「わが世をばけふかあすかと待つかひの涙の
    滝といづれ高けむ」(ありはらゆきひら)

   (自分が世に出るのは今日か明日かと待つのだ
    が、甲斐なさに落ちる涙の滝とこの布引の滝
    とどちらが高いであろう)

作者・・尭胤法親王=1458~1520。三千院の僧。天台
     座主。


このページのトップヘ