名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2011年12月

山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人目も草も 
かれぬと思へば
            源宗干(みなもとむねゆき)
            (古今集・315、百人一首・28)

(やまざとは ふゆぞさびしさ まさりける ひとめも
 くさも かれぬとおもえば) 

意味・・山里はいつでも寂しいものだが、とりわけ冬になり
    寂しさが増して来たことだ。春の花、秋の紅葉を訪れ
    た人目も、見るもののない冬には離(か)れ、わずかに
    目を慰めてくれた草も枯れてしまった、と思うと。

    山里に住む人の心で、初冬の感じを詠んでいます。
    寂しい山里に住んできて、春や秋には人目もあった
    が、その人目も冬には絶える人事の上での寂しさ、
    草も枯れてしまう自然の上での寂しさ、それに
    これからの長いひと冬を寂しさの中に住むことを
    思う、心情での寂しさ、これらを重ねたものです。

 注・・人目=人の訪れ、出入り。
    かれぬ=人目も離(か)れと草木が枯れを掛けている。

作者・・源宗宇=~939年没。正四位下・右京大夫。三十六
     歌仙の一人。
   


旅人の 宿りせむ野に 霜降らば 我が子羽含め 
天の鶴群
           遣唐使随員の母(万葉集・1791)
           (けんとうしずいいんのはは)
(たびびとの やどりせんのに しもふらば わがこ
 はぐくめ あめのたづむら)

意味・・旅人が野宿をすることがあって、その野に
    冷たい霜が降る事があったら、私の子をそ
    の羽で包んでかばっておくれ、大空の鶴た
    ちよ。

    何年も帰らない旅に立つ息子へ、その母が
    情愛を込めて詠んだ歌です。旅は遣唐使船
    で渡唐するので、旅路の危険はほとんどは
    海上です。「宿りせむ野」と表現していま
    すが、大空高く飛ぶ鶴に子の守になって欲
    しい気持を表しています。

 注・・羽含(はぐく)む=育む。親鳥がその羽で雛
     鳥をくるみ覆う事。
       

道野辺に 阿波の遍路の 墓あはれ  
                  
              高浜虚子(たかはまきょし)
              (五百句)
(みちのべに あわのへんろの はかあわれ)

意味・・成し遂げたい願いを秘めての阿波巡礼に旅立った
    お遍路さんだが、途中で病に倒れ身元不明のまま
    土葬され墓が建てられたのだろう。どんな願いを
    持っていたのであろうか。全く願いがかなえられ
    ずに無念の気持で死んでいったのであろう。あわ
    れに思われることだ。

 注・・道野辺=道ばた。
    阿波=今の徳島県。
    遍路=祈願のため四国八十八箇所を巡ること。巡礼。

作者・・高浜虚子=1874~1959。小説家。正岡子規と交際。

山茶花の 一枝いけて つつましく けさの朝茶を
いただかむかも
             相馬御風(そうまぎょふう)
             (御風歌集)
(さざんかの ひとえだいけて つつましく けさの
 あさちゃを いただかんかも)

意味・・庭に咲いている山茶花の一枝を花瓶にでも活けて
    慎ましく今朝のお茶をいただこうかなあ。

    作者の平安な朝の一時、生き方が歌われています。

作者・・相馬御風=1883~1950。早稲田大学卒業。詩人。
     良寛の研究に専心。早稲田大学の校歌「都の西北」
     の作詩者。


いたづらに なす事もなく くれはつる としもつもりの
うらめしの世や
              寒河正親(さむかわまさちか)
              (子孫鑑)
(いたずらに なすこともなく くれはつる としも
 つもりの うらめしのよや)

意味・・今年はこれだけの事をしたよという充実感もなく、
    無駄に月日を送ってはや年も暮れようとしている。
    悔やまれることである。子や孫よ、こんな事では
    いけないのだぞ。

 注・・としもつもり=年も積り。月日が積み重ねる。

作者・・寒河正親=生没年未詳。

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