名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2012年01月

このごろは 花も紅葉も 枝になし しばしな消えそ
松の白雪
               後鳥羽院(ごとばいん)
               (新古今和歌集・683)
(このごろは はなももみじも えだになし しばし
 なきえそ まつのしらゆき)

意味・・このごろは花も紅葉も枝にない。だからしばらく
    消えてくれるな。松に積もった白雪よ。

 注・・な消えそ=「な・・そ」は禁止の意味を表す。
     消えないでくれ。

作者・・後鳥羽院=1239年没、60歳。新古今和歌集の撰集を
     命じる。鎌倉幕府の打倒を企て、隠岐に流される。

世の中の 人の心は 花染めの 移ろひやすき 
色にぞありける
               読人しらず
               (古今和歌集・795)
(よのなかの ひとのこころは はなぞめの うつろい
 やすき いろにぞありける)

意味・・世の人の心などというものは、露草で染めた
    染物のように、すぐにさめやすい、うわべだ
    けの美しさだったのだなあ。

    恋・愛情関係について詠んだ歌です。

 注・・花染め=露草の汁で染めたもので、色があせ
     やすい。
    うつろひ=変わってゆく、心変わりする。
    色=表面の華やかさ。美しいという意が含ま
     れる。


踏み分けし 昨日の庭の跡もなく また降り隠す 
今朝の白雪
              日野俊光(ひののとしみつ)
              (玉葉和歌集・961)
(ふみわけし きのうのにわのあともなく またふり
 かくす けさのしらゆき)

意味・・踏み分けた昨日の庭の雪に、その足跡もなくして
    しまうように、また降り隠す今朝の白雪よ。

    足跡のない庭の雪を美しいと詠んだ歌です。

作者・・日野俊光=12360~1326。正二位権大納言。鎌倉期
     の歌人。


なんのその 面の厚いが 芸の先
                      作者不明
                      (もみぢ笠)
(なんのその つらのあついが げいのおも)

意味・・人前でする諸芸に成功するかしないかは、ものおじ
    しない心。面の厚さで決まる。誰でも間違うことは
    あるし、調子の出ない時もある。失敗もご愛嬌と、
    のんでかかる心の張りが必須の前提だから、堂々と
    やれという事。

 注・・面の厚い=面の皮が厚い、厚かましくて恥をしらぬ事。
    先(おも)=主。第一の条件・資格。

天霧らひ ひかた吹くらし 水茎の 岡の港に
波立ちわたる
                 詠み人知らず
                 (万葉集・1231)
(あまきらい ひかたふくらし みずくきの おかの
 みなとに なみたちわたる)

意味・・空が一面に曇って風が吹いている。岡の港には
    波が一面に立っている。

    波が高いので、舟の航行を心配して詠んでいます。

 注・・ひかた=日方。日のある方から吹く風、西南の風。
    水茎=岡の枕詞。
    岡の港=福岡県遠賀郡を流れる遠賀川の河口。

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