名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2012年03月


石ばしる 垂水の上の さ蕨の 萌え出づる春に 
なりにけるかも
             志貴皇子(しきのみこ)
             (万葉集・1418)
(いわばしる たるみのうえの さわらびの もえいずる
 はるに なりけるかも)

意味・・水が激しく岩にぶつかり落ちる滝のほとりの蕨が
    今こそ芽吹く春になったことだなあ。

    雪どけのために水かさが増した滝のほとりに、芽吹
    いたワラビを見つけたことを、長い間待ち焦がれた
    春の訪れとして受け取り、率直な喜びを歌っている。

    詞書では「歓びの歌一首」とあり、これは何かの喜び
    を抽象的に歌ったものです。
    大きな仕事を成し遂げた時の晴れ晴れとした気持を
    感じさせられます。

 注・・垂水の上=滝のほとり、垂水はたれ落ちる水のこと。

作者・・志尊皇子=~715。天智天皇の子。



心だに 誠の道に かないなば 守らぬとても
此方はかまわぬ
           一休宗純(いっきゅうそうじゅん)
           (出典未詳)
(こころだに まことのみちに かないなば まもらぬ
 とても こちはかまわぬ)

意味・・真心を以って生活をしていくので、神様は私を
    守ってくれなくても結構だ。神様に頼るより自
    分の誠に頼りたい。 

    一休は本歌をうまく茶化して詠んでいます。
    本歌は菅原道真の次の歌です。
   「心だに 誠の道に かないなば 祈らずとても
    神や守らん」(出展・鸚鵡問答)
   (心さえ誠の道にかなうものであれば、しいて
    祈らなくても神は守ってくださるだろう)    

 注・・誠=誠意、真心、いつわらない心。

作者・・一休宗純=1394~1481。頓知でお馴染みの一休
     さんです。    


八重咲けど にほひは添はず 梅の花 紅深き 
色ぞまされる
           散逸物語(さんいつものがたり)
           (風葉和歌集・37)
(やえさけど においはそわず うめのはな くれない
 ふかき いろぞまされる)

意味・・八重に咲いているが、匂いが加わっていない
    梅の花は、紅の深い色の方が優れています。

    紅梅と白梅の優劣を競って花を賞美する時に
    紅梅について詠んだ歌です。

 注・・散逸物語=散逸して現在は無くなっている物語。

浅緑 みだれてなびく 青柳の 色にぞ春の
風も見えける
           藤原元真(ふじわらのもとざね)
           (後拾遺和歌集・76)
(あさみどり みだれてなびく あおやぎの いろにぞ
 はるの かぜもみえける)

意味・・乱れてなびいている柳の葉のうす緑色によって、
    春風も目に見えるものだなあ。

    やっと春になった嬉しさを詠んでいます。

作者・・藤原元真=生没年未詳。丹波介(たんばのすけ)・
     従五位下。
   



都へと 思ふにつけて かなしきは たれかはいまは
我を待つらん
               源実基(みなもとのさねもと)
               (千載和歌集・568)
(みやこへと おもうにつけて かなしきは たれかわ
 いまは われをまつらん)

意味・・都に早く帰りつきたいと思うのだが、悲しいのは
    誰も今は私を待つ人がいないということだ。

    地方に赴任中、都に残した妻が無くなり、急いで
    帰る途中に詠んだ歌です。

 注・・たれかは=「かは」は反語の意を表す。・・だろうか
     いや・・ではない。

作者・・源実基=生没年未詳。美濃守、従四位下。



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