名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2013年01月

かささぎの 渡せる橋に おく霜の 白きを見れば
夜ぞふけにける
            大伴家持 
         (新古今和歌集・620、百人一首・6)

(かささぎの わたせるはしに おくしもの しろきを
 みれば よぞふけにける)

意味・・かささぎが七夕の宵に羽を並べて橋として織女
    星を渡すという伝説の天上の橋、この橋ならぬ
    宮廷の御階(みはし・階段)におりている霜の白
    いのを見るといつのまにか、夜がふけてしまっ
    たことだ。

    冬の夜ふけのきびしい寒さを、宮中の御階(階
    段)におりた霜の白さによってとらえた歌です。

注・・かささぎの橋=陰暦7月7日の夜、七夕の二星、
     牽牛星と織女星とが逢う時、かささぎが翼を
     並べて天の川にかけるという想像上の橋。
     ここでは、宮中の御階(みはし・階段のこと)
     に見立てている。宮中を天上界と見て、橋を
     階(はし)と見たもの。
    霜の白きを見れば=霜がおりるのは深夜から末
     明にかけて。霜の白さを見て夜が更けたのに
     気がつく。その白さを見て寒さの厳しさも表
     わしている。

作者・・大伴家持=おおとものやかもち。718~785。
     大伴旅人の子。「万葉集」の編纂も行う。


うづもるる 松のしずえや これならん 岡べにちかき
雪の一むら
             伏見院 (金玉歌合・59)

(うずもるる まつのしずえや これならん おかべに
 ちかき ゆきのひとむら)

意味・・埋もれている松の下枝がこれなのであろうか。
    岡のほとり近くに見えるこの雪のひとかたまり
    は。

 注・・しづえ=下枝。下の枝。

作者・・伏見院=ふしみいん。1265~1317。第92代天
     皇。「玉葉集」を完成させた。

冬ごもる 病の床の ガラス戸の 曇りぬぐへば
足袋干せる見ゆ
             正岡子規 (竹の里歌)

(ふゆごもる やまいのとこの がらすどの くもり
 ぬぐえば たびほせるみゆ)

意味・・寒い冬中を家にこもって病床に臥している
    自分であるが、病室のガラス障子の曇りを
    ぬぐってみたら、庭に足袋を干してあるの
    がよく見えた。

    干されている足袋は子規が履くものであろ
    う。歩行の自由の欠く子規は、直接の看病
    には有難く感謝しているものの、目の見え
    ない所で自分の為に苦労してくれている家
    族の姿を見て、感謝をより一層込めて詠ん
    だ歌です。

 注・・冬ぐもる=冬の寒いうち、家の中にこもっ
     ている。
    病の床=子規は結核で客血し、脊髄カリエ
     スで腰を痛め歩行困難になり長年病床に
     臥す。

作者・・正岡子規=まさおかしき。1867~1902。
     東大国文科中退。俳句・短歌の革新運動
     を進め写生主義をとる。歌集「竹の里歌」。

寂しさは 身に添ふ物と 成りにけり 秋よりのちの
夕暮れの空
            宗尊親王 (文応300首・179)

(さびしさは みにそうものと なりにけり あきより
 のちの ゆうぐれのそら)

意味・・寂しさは自分の身にくっついて離れないものと
    なってしまった。秋より以後の夕暮れの空を眺
    めていると。

    寂しさは、自分の意志通りにならない為です。

    11歳で鎌倉幕府の征夷大将軍になり、執権者
    の北条時宗にちやほやされ、いいなりに動ご
    かされていたが、歳を重ねるうちに時宗の意
    のままに動かなくなった。それを嫌った時宗
    からの圧迫を受けるようになり征夷大将軍の
    職の辞任に追いやられた。
    辞任は25歳の時で、上の歌を詠んだのは19歳
    頃です・・が。

作者・・宗尊親王=むねたかしんのう。1242~1275。
     後嵯峨天皇の第二皇子。11歳の時に鎌倉幕府
     第六代将軍になる。25歳の時将軍職を追放さ
     れる。30歳で出家する。
    

さざなみや くもらぬ時を 鏡山 みがく氷に
うつしてぞみる
           藤原為家 (中院詠草・67)

(さざなみや くもらぬときを かがみやま みがく
 こおりに うつしてぞみる)

意味・・琵琶湖で、曇りなき政道が行われているのかど
    うか、今の御代を鏡山の鏡のように磨きあげた
    湖面の氷で映して見たいものだ。

    藤原時代は良い政治が行われていると、褒めた
    歌です。  
  
 注・・さざなみ=「志賀」の枕詞、琵琶湖西南岸一帯。
    くもらぬ時=曇らぬ治世・時代、曇りなき御代
     (みよ)。
    鏡山=近江国の歌枕。「鏡」を掛ける。
    みがく氷=鏡のように氷を磨く。一点の曇りも
     ない政道を暗示。

作者・・藤原為家=ふじわらのためいえ。1198~1275。
     藤原俊成を祖父に、定家を父に持つ。歌集
     「大納言為家家集」。
     

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