名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2013年02月

深山には なべて木の芽の 春の世も 松を残して
積もる雪かな
              三条西実隆
             (内裏着到百首・17)

(みやまには なべてきのめの はるのよも まつを
 のこして つもるゆきかな)

意味・・山深いここでも木の芽がふくらみ、春の訪れ
    を見せているが、松には、青葉を隠して、雪
    が残っていることだ。

 注・・春=「木の芽が張る」を掛ける。
    松を残して=春の気配に松が取り残されて。

作者・・三条西実隆=さんじょうにしのさねたか。1454
     ~1537。52歳で内大臣、62歳で出家。

人の心 あらずなれども 住吉の 松のけしきは
変らざりけり
            津守景基 (千載和歌集・1033)

(ひとのこころ あらずなれども すみよしの まつの
 けしきは かわらざりけり)

意味・・人心はすっかり変わってしまったが、住吉の松
    の様子だけは変わらないことだ。

    作者の父親が亡くなったので、一緒にいた兄が
    住吉を離れることになった。この時に詠んだ歌
    です。松は全く変わらないのに、人の動きのあ
    わただしさを詠んでいます。

 注・・あらず=違う、そうではない。
    住吉=摂津国。松の名所。

作者・・津守景基=つもりのかげもと。生没年未詳。


過ぎきにし 四十の春の 夢のよは 憂きよりほかの
思ひでぞなき
           覚審法師 (千載和歌集・1028)

(すぎきにし よそじのはるの ゆめのよは うきより
 ほかの おもいでぞなき)

意味・・過ぎて来た四十年の、春の夢のようにはかない
    人生は、憂いという以外の思い出はないことだ。

 注・・春の夢=はかなさの喩え。
    春の夢のよ=春の夢の世。はかなさそのものの
     ような人生。

作者・・覚審法師=かくしんほうし。生没年未詳。比叡
     山の僧。

唐錦 秋見し水の 鏡さへ 落葉に曇る 
冬の山川
             藤原持季 (仙洞歌会・10)

(からにしき あきみしみずの かがみさえ おちばに
 くもる ふゆのやまかわ)

意味・・秋には唐錦のような紅葉を映し見た山川の水鏡
    までもが、冬の今は散りかかる落ち葉で曇って
    いる。

作者・・藤原持季=ふじわらのもちすえ。1415年生まれ。
     従一位権大納言。1467年出家。

庭ひろき 池の心の ちりもなし 松にや世々の
年つもるらん
            正徹 (正徹詠草・22)

(にわひろき いけのこころの ちりもなし まつにや
 よよの としつもるらん)

意味・・広い庭にある大きな池の水には一点の塵も積もっ
    ていないが、そのほとりの松にはこれから幾世に
    もわたる年が積もるだろう。

 注・・庭ひろき池=広い庭と広い池の両意。

作者・・正徹=しょうてつ。1381~1459。室町時代の歌僧。
     歌集「草根集」。

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