名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2013年06月

身はたとひ 武蔵の野辺に 朽ちぬとも 留め置かまし
大和魂
             吉田松陰 ()

(みはたとい むさしののべに くちぬとも とどめ
 おかまし やまとだましい)

意味・・身はたとえ、武蔵の野辺で朽ち果てようが、
    大和魂だけは朽ちさせることなく、留め置い
    ておこう。
    正しいと信じた事は、死を覚悟してでも断固
    としてやらずにはおれない。これが日本人の
    魂であり、この意志と覚悟を忘れずに持ち続
    けよう。

    どのような困難が待ち受けていても、成し遂
    げる気迫。周りから何と言われようが、やる
    と決めたらやる。阿保になってこそ志が成就
    し誠意が天に通じる。

 注・・大和魂=日本固有の気概のある精神。困難が
     待ち受けていても成し遂げる心意気。明治
     になって、国家への犠牲精神とともに他国
     への排外的・拡張的な姿勢を含んだ語とし
     て用いられ、昭和の初期より軍国主義的な
     色彩を強く帯び、現状を打破し突撃精神を
     鼓舞する意味で使われた。

作者・・吉田松陰=よしだしょういん。1830~1859。29
     歳。幕末の志士、思想家。

出典・・留魂録。

鳥のかげ 窓にうつろふ 小春日に 木の実こぼるる
音しづかなり
            金子薫園 (叙景詩)

(とりのかげ まどにうつろう こはるびに このみ
 こぼるる おとしづかなり)

意味・・部屋の障子には小春日の光が射している。小鳥
    の影が時折障子をよぎって行き、木の実のこぼ
    れる音が時々静かに聞こえて来る。

    小鳥のついばんでいる木の音、時々枝移りして
    いるさま、その影が障子に映って、ついばみこ
    ぼした木の実の音が聞こえて来る。    

作者・・金子薫園=かねこくんえん。1867~1951。東京
     府尋常中学中退。尾上柴舟と共「叙景詩」を
     刊行。

何せうぞ くすんで 一期は夢よ ただ狂へ
          詠み人しらず (閑吟集)

(なにしょうぞ くすんで いちごはゆめよ
 ただくるえ)

意味・・何になるだろう。真面目くさってみても。
    しょせん、人間の一生は夢のようにはか
    ないものだ。ただひたすらに楽しみ遊べ。

    後から振り返ると、人間の一生は短いも
    の。つらい思いの毎日を過ごしている時
    こそ、狂ったように無責任に振る舞う気
    持ちで人生を楽しむべき・・。

 注・・くすむ=きまじめである、陰気である。
    一期=人の一生、生涯。
    夢=不確かなもの、はかないこと。

後れなば 梅も桜に 劣るらん 魁てこそ
色も香もあれ
          河上弥市

(おくれなば うめもさくらに おとるらん さきがけて
 こそ いろもかもあれ)

意味・・梅は春に先駆けて桜よりも早く咲くから、色や
    香りが人々に愛されるのだ。桜より送れて咲い
    たなら、華やかな桜に見劣りしてしまう。人の
    行動も先駆けてこそだ。

      梅は早く咲くからこそ色香が素晴らしいと感じ
    る。桜の後では桜の美しさにかすんでしまう。
    人の行いも先陣を切るからこそ、価値があるの
    だ。誰もが手掛けていないことに、勇気をもっ
    て恐れず進んでいくことが大事なのである。

作者・・河上弥市=かわかみやいち。1843~1863。20歳。
     幕末の志士。但馬の変で形勢不利になり自決。

出典・・斉藤亜加里著「教訓歌」。
    

冬至夏至けふは夏至なる月日かな
                   及川 貞

(とうじげし きょうはげしなる つきひかな)

意味・・一年中で一番日が短いのが冬至で、長い
    のが夏至である。その繰り返しで年月は
    過ぎ、人は齢(よわい)を重ねてゆく。
    今年の夏至は6月21日。今日は夏至だと
    思うと感慨を催す。

 注・・夏至=太陽が夏至点を通過する時で、北
     半球では昼が最も長く、夜は最も短く
     なる。

作者・・及川 貞=おいかわてい。1899~1993。
     水原秋桜子に師事。家庭の主婦に終始。

出典・・村上護著「今朝の一句」。

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