名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2013年07月

ふくる夜の 灯のかげを おのづから 物のあはれに
むかひなしぬる
            花園院

(ふくるよの ともしのかげを おのずから ものの
 あわれに むかいなしぬる)

意味・・夜がふけてきたため、部屋の片隅に灯してある
    燭台の明りが際立って見えるようになった。
    それでいてその際立ち方がなんとなく寂しくて
    物の哀れを誘う。私はその哀れにひきつかられ
    るようにその前に黙然と座っている。

    南北朝の対立、大火災の続発、地震などで世間
    が騒然とした空気のもとに詠まれています。

    
 注・・あはれ=寂しさ、悲しさ。

作者・・花園院=はなぞのいん。1297~1348。第95代の
     天皇。1335年出家。

出典・・後藤安彦著「短歌で見る日本史群像」。

馬は足 扇はかな目 舟は舵 人は心を
用いこそすれ
          細川幽斎 (幽斎公御掟)

(うまはあし おうぎはかなめ ふねはかじ ひとは
 こころを もちいこそすれ)

意味・・皆それぞれに大切なものがあり、それがなけ
    れば何の値打ちもなくなるものである。馬で
    言えば足であり、扇では要である。舟では舵
    がなければ用をたさない。人も同じで真心が
    なければ人として生きられないのだ。

作者・・細川幽斎=ほそかわゆうさい。1534~1610。
     熊本細川藩の祖。剣術・茶道・和歌など武
     芸百般に精通。


現在の 口先だけの 自然保護 「もののけ姫」観て
一から見直す
                新井悠子

(げんざいの くちさきだけの しぜんほご 「もののけ
 ひめ」みて いちからみなおす)

意味・・自然保護が叫ばれているが、現在の様子を見て
    いると、口先だけのように感じられる。映画「
    もののけ姫」を観て、自然保護を一から見直す
    ようになった。

    「もののけ姫」は宮崎駿原作・脚本・監督によ
    る映画。この物語は、中世から近世に移行しょ
    とする日本を舞台に展開する。人間が増える事
    により、次々と原生林が切り拓かれていったが、
    そこにはまだ人間を寄せ付けない太古の原生林
    が残っていた。生きるために森を拓こうとする
    人間、逆に生きるために森を守ろうとする神々、
    この両者の壮絶な戦いに巻き込まれていく主人
    公のアシタカ。まさに波乱に満ちた一大叙事詩
    といえる内容です。

    自然保護が叫ばれながら、山が崩され宅地とな
    って行く。農薬により水辺の昆虫、トンボなど
    が減っている。自然保護の大切さを改めて感じ
    て詠んだ歌です。

作者・・新井悠子=あらいゆうこ。川越西高校生。’98
     年当時、17歳。

出典・・神作光一・大滝貞一編「短歌青春」(東洋大学「
     現代学生百人一首」)
   

若ければ 道行き知らじ 賄はせむ 黄泉の使
負ひて通らせ
            山上憶良 (万葉集・905)

(わかければ みちゆきしらじ まいはせん したえの
 つかい おいてとおらせ)

詞書・・男子(おのこ)名は古日(ふるひ)に恋ふる歌。

意味・・古日は年端もいかない幼い子。どう行ってよい
    か分りますまい。贈り物をしますから、黄泉の
    国の使いよ、どうぞ、あの子を背負って行って
    やって下さい。

    我が子、古日が急病にかかり亡くなった時に詠
    んだ歌です。

    この歌の前に歌われた長歌の一節です。

    我が子の古日は、明けの明星の輝く朝には、床
    のあたりを離れず、立っていても、座っていて
    も、一緒に遊び戯れ、宵の明星の輝く夕方にな
    れば、さあ寝ようと手を引いて、あどけなく、
    こう言った。「おとうさんもおかあさんも、ぼく
    のそばを離れないで。ぼく、真ん中に寝るんだ」
    ・・・。

 注・・賄(まひ・まひなひ)=人に物を贈る、賄賂を贈る。
    黄泉(したへ)=下方。地下、あの世。黄泉(よみ)。
     人の死後、魂がが行くという所。冥土。

作者・・山上憶良=やまのうえのおくら。660~733。遣唐使
     として渡唐。筑前守。大伴旅人と親交。


いづこにも 咲きはすらめど 我が宿の 山と撫子
誰に見せまし
              伊勢 (拾遺和歌集・132)

(いずこにも さきはすらめど わがやどの やまと
 なでしこ たれにみせまし)

意味・・どこにも咲きはするものかも知れないが、この
    素晴らしい我が家の大和撫子を、あなた以外の
    誰に見せようか。あなたた以外に見せる人はい
    ない。・・・あなたに見てもらいたい。

作者・・伊勢=いせ。874~938。宇多天皇の后・温子に
     仕える。家集「伊勢集」。
    

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