名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2014年01月

(1月26日・名歌鑑賞)

 

朝戸あけて 見るぞさびしき 片岡の 楢の広葉に
ふれるしらゆき
                        源経信

(あさとあけて みるぞさびしき かたおかの ならの
 ひろはに ふれるしらゆき)

意味・・朝、戸を開けると、片岡の楢の広葉に降ってい
    る白雪は、なんとも寂しいものだ。

    目覚めた雪の朝、楢の広葉に音もなく積もる雪
    を見た時の風情を「さびし」と詠んだ歌です。

 注・・片岡=片方が切り立った崖になっている岡。

作者・・源経信=みなもとのつねのぶ。1016~1097。
     正二位大納言。

出典・・千載和歌集・445。

柴の戸に ふるき筧の 音きくも 命の水の
すえぞかなしき
                心敬

(しばのとに ふるきかけいの おときくも いのちの
 みずの すえぞかなしき)

意味・・粗末な庵で古びた筧の水の音を聞くにつけて、
    その水がいつか尽き果てるように、私の寿命
    が尽き果てる将来の事を思うと悲しい。

    元気な今、その気があれば、険しい山にでも
    登れるし荒波の海に向かって泳ぐ事も出来る。
    病気になり、寝たきりにでもなれば、山に登
    りたいと思っても、海で泳ぎたいと思っても
    もう出来なくなる。
    人の寿命は、容器から流れ出る水のように、
    いつかは尽きる。やりたい事は元気な時に無
    理をしてでもやり遂げたいものだ・・。

 注・・柴の戸=柴造りの粗末な家。
    筧=地上に掛け渡して水を引く樋。
    命の水=人の寿命を、容器から流れ出ていつ
     かは尽きる水にたとえていう語。

作者・・心敬=しんけい。1406~1475。権大僧都。歌
    人、連歌作者。     

出典・・「寛正百首」(中世和歌集室町篇・新日本古典
     文学大系)。

餅を焼く 香ほのぼの 雪の夜の せまきわが家に
こもりぬるかも
                相馬御風

(もちをやく かおりほのぼの ゆきのよの せまき
 わがやに こもりぬるかも)

意味・・外は暗く冷たい雪明りの夜である。狭い我が家
    の中では、餅を焼く香りが、ほのぼのと暖かく
    いっぱい立ち込めている。

     歌の表面には人は出てこないが、寒い雪の夜に、
    餅を焼きながら囲炉裏を囲んで談笑している大
    人や子供等の睦まじい姿が見えて来る。

作者・・相馬御風=そうまぎよふう。1883~1950。
    早稲田大学卒。早大講師。詩人・歌人。

出典・・新万葉集・巻四。



山陰の 岩もる清水 こほりいて をとせぬしもぞ 
冬をつげける
                頓阿法師

(やまかげの いわもるしみず こおりいて おとせぬ
 しもぞ ふゆをつげける)

意味・・山陰の岩間から音をたてて洩れていた清水が
    凍りついてしまった。そのさまは音をたてな
    いものの、冬の到来を告げている。

    音が無くても冬を告げる、という面白みを詠
    んでいます。

 注・・しも=強調の助詞。

作者・・頓阿法師=とんあほうし。1289~1372。二条
    為世門の和歌四天王。

出典・・「頓阿法師詠」(中世和歌集室町編・新日本古典
    文学体系)。




真木の屋に つもれる雪や 解けるらん 雨に知られぬ
軒の玉水
                   宗尊親王

(まきのやに つもれるゆきや とけるらん あめに
 しられぬ のきのたまみず)

意味・・真木の屋に積もった雪が解けたのであろうか。
    雨では見られない玉のような雫が軒から落ち
    ている。

    参考歌です。

    山深み 春とも知らぬ 松の戸に たえだえ
    かかる 雪の玉水    (意味は下記参照)
             
 注・・真木の屋=杉や檜で屋根をふいた家。

作者・・宗敬親王=むねたかしんのう。1242~1275。
     33歳。鎌倉第六代将軍。

出典・・文応三百首・197(中世和歌鎌倉編・新日本古典
    文学大系)。

参考歌です。

山深み 春とも知らぬ 松の戸に たえだえかかる 
雪の玉水
                式子内親王

(やまふかみ はるともしらぬ まつのとに たえだえ
 かかる ゆきのたまみず)

意味・・山が深いので、春になったとも知らない山家(やまが)
    の松で作った戸に、とぎれとぎれに雪どけの玉のよう
    に美しい滴(したた)りが落ちかかっている。

    しんと静まった風景の中で滴りの音だけがする。この
    ことより、深山の雪に埋もれた山荘にも、かすかな春
    の訪れが来た事を詠んでいます。

 注・・松の戸=松の枝や板でを編んで作った粗末な戸。
    たえだえに=とぎれとぎれに。

作者・・式子内親王=しよくしないしんのう。1149~1201。

出典・・新古今和歌集・3。

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