名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2014年02月

霰ふる音にも世にも聾傘
                長谷川馬光

(あられふる おとにもよにも つんぼがさ)

意味・・霰が降るなかに傘をさして行くと、傘に
    ぱらぱらとうるさいほどであるはずだが、
    年をとつて耳が遠くなったので霰の音も
    それほどには聞こえない。、そのように
    公の勤めをやめた自分には、世の中の動
    きにも無頓着に、遁世したような暮らし
    をしている。

作者・・長谷川馬光=はせがわばこう。1685~
    1751。医者の家の次男。山口素堂に師事。

出典・・句集「かさねがさ」(日本古典文学全集
    「近世俳句俳文集」)

天地の 和して一輪 福寿草 さくやこの花
幾代経るとも
              二宮尊徳

(あめつちの わしていちりん ふくじゅそう さくや
 このはな いくよふるとも)

意味・・長い冬の峠を越え、ついに春の兆しを伝える福
    寿草のつぼみが雪の中から現れた。
    この愛らしい花は、天の恵みと地の恵みが一体
    となって生まれたものである。この異なるもの
    二つが一つになる事を「和」というが、福寿草
    も和の恵みを受けて今年も花を咲かせた。来年
    も再来年も、ずっと咲き続けて福寿、すなわち
    「幸福と長寿」を子々孫々まで願いたいものだ。

    思えば、人間社会の「福」も、人と人とが和合
    して初めて生まれるものである。お互いに反発
    しあい、闘争しあっては幸福の花は咲かないも
    のである。

 注・・福寿草=金鳳花(きんぽうげ)科の花。2月から3
     月にかけて黄色の花を咲かす。「幸福と長寿」
     の一字取っているので、縁起のいい花として
     正月によく飾られる。また、南天の実とセット
     で「難を転じて福となす」という縁起ものとし
     て飾られる。

作者・・二宮尊徳=にのみやたかのり。一般にそんとくと
     読まれる。通称二宮金次郎。1786~1856。江戸
     時代の農政家・思想家。

出典・・メールマガジン「おかみさん便り」。
    

吹きくれば 香をなつかしみ 梅の花 ちらさぬほどの
春風もがな
                 源時綱

(ふきくれば かをなつかしみ うめのはな ちらさぬ
 ほどの はるかぜもがな)

意味・・風が吹いて来ると、風が運んで来る梅の香りが
    したわしいので、風は吹いてほしいのだが、風
    が吹けば花は散ってしまう。だから、花を散ら
    さない程度の春風であつたならなあ。

作者・・源時綱=みなもとのときつな。生没年未詳。従
    五位上・肥後守。

出典・・詞花和歌集・9。

父の部屋 いまだにずっと おいてある 昔にあげた
父の似顔絵
                   園田理恵

(ちちのへや いまだにずっと おいてある むかしに
 あげた ちちのにがおえ)

意味・・ある日、久しぶりに父の部屋に入った。壁には
    小さい頃私が描いた父の似顔絵を未だずっと飾
    っている。

作者・・園田理恵=そのだりえ。‘12年当時大阪女学院高
    等学校2年。

出典・・同志社女子大学篇「31音青春のこころ・2012」。

我れゆ後 生まれむ人は 我がごとく 恋する道に
あひこすなゆめ
                  柿本人麻呂

(われゆのち うまれんひとは わがごとく こいする
 みちに あいこすなゆめ)

意味・・私よりも後に生まれて来る人は、この私のよう
    に、恋する道に踏みこんでくださるな、決して。

    私は恋の苦しみに悩んで来た。後世の人よ、恋
    に敗れて気力を無くす思いをしないでくれ。

 注・・ゆ=・・から。動作の時間的・空間的起点を表す。
    道=恋の苦しさを道に譬える。
    あひ=相。ともに・・(恋を)する。
    こす=下手に出て頼む意。・・してほしい。
    な=禁止の助詞。
    ゆめ=禁止表現を伴って、けっして。

作者・・柿本人麻呂=かきのもとのひとまろ。生没年
    未詳。810年頃死亡。宮廷歌人。

出典・・万葉集・2375。

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