名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2014年03月

わが宿の 桜はかいも なかりけり あるじからこそ
人も見にくれ
                 和泉式部

(わがやどの さくらはかいも なかりけり あるじ
 からこそ ひともみにくれ)

意味・・私の住まいの桜は美しく咲いても、何の咲き
    甲斐もないことです。家主の人柄によって人
    も見に来るのですから。

 注・・あるじからこそ人も見にくれ=何の魅力もな
     い私のこと、家主の人柄によって人も訪ね
     て来るのですから。

作者・・和泉式部=いずみしきぶ。生没年未詳。977
     年ころの生まれ。「和泉式部日記」。

出典・・後拾遺和歌集・102。

忘るるやと 物語りして 心遣り 過ぐせど過ぎず
なほ恋にけり
                詠み人知らず

(わするるやと ものがたりして こころやり すぐせど
 すぎず なおこいにけり)

意味・・忘れることもあろうかと、人と世間話などをして
    気を紛らわせて、物思いを消してしまおとしたが、
    一層恋心は募(つの)るばかりである。

    自分一人でじっとしているよりも、人と話してい
    るうちに気が晴れて来ることもあるから、世間話
    をしてやり過ごそうと思ったが、そうやって見て
    も、やはり恋しい。

    何か別の事に打ち込んでいる間に忘れてしまうと
    いう恋は本当の恋ではないのかも知れない。

 注・・忘るるやと=(恋の苦しみを)忘れる事が出来るか
     なあ。
    物語り=世間話をすること。
    心遣(や)り=心をそちらの方に向ける。

出典・・万葉集・2333。

その子二十 櫛にながるる 黒髪の おごりの春の
うつくしきかな
                 与謝野晶子

(そのこはたち くしにながるる くろかみの おごりの
はるの うつくしきかな)

意味・・その乙女は今まさに二十歳、その長く豊かな
    黒髪は、梳(す)く櫛の目から溢(あふ)れ落ち
    て、流れるごとく清らかで美しい。まさにそ
    れは、夢多き青春の自信に満ちた誇らしさを
    思わせる。

 注・・おごり=誇り、わがままにふるまう。

作者・・与謝野晶子=よさのあきこ。1878~1942。堺
    女学校卒。与謝野鉄幹は夫。

出典・・歌集「みだれ髪」。

天つ空 ひとつに見ゆる 越の海の 波をわけても
帰るかりがね
                 源頼政

(あまつそら ひとつにみゆる こしのうみの なみを
 わけても かえるかりがね)

意味・・空と海がひとつになって見分けがつかない、は
    るか彼方の越の海の、荒い波路を乗り越えてで
    も帰って行く雁だなあ。
 
    昔のよき時代に帰りたい作者の想いを帰雁に思
    い入れている。

 注・・越の海=北陸の海。「来し」を掛ける。
    波をわけても=帰るべき季節になったので、北
     国の荒い波路を乗り越えてでも。

作者・・源頼政=みなもとのよりまさ。1104~1180。
    平氏と対立し宇治川の合戦に負けて自害した。

出典・・千載和歌集・38。

草枕 夜ごとに変はる 宿りにも 結ぶは同じ
古里の夢
                良寛

(くさまくら よごとにかわる やどりにも むすぶは
 おなじ ふるざとのゆめ)

意味・・旅を続けているので毎夜泊まる所が違うけれど
    も、夢に見るのは、どこも同じように懐かしい
    故郷である。

 注・・草枕=「旅」の枕詞であるが、ここでは旅の途
    中で寝ること。

作者=りょうかん。1758~1831。

出典・・谷川敏郎著「良寛全歌集」。

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