名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2015年01月

 
**************** 名歌鑑賞 ***************
 
 
あれにける 志賀の故郷 冬くれば 所もわかぬ
雪の花園
                 藤原為家
            
(あれにける しがのふるさと ふゆくれば ところも
 わかぬ ゆきのはなぞの)

意味・・すっかり荒れ果ててしまった志賀の旧都にも、
    冬が来ると、どこと区別も出来ぬほど一面に
    雪が積もり、春の花園ならぬ雪の花園に見え
    ることだ。

    荒廃した旧都を花園に見立て、明るい将来を
    期待しています。

    参考歌です。
    「さざなみや志賀の都は荒れにしを昔ながら
    の山ざくらかな」 (意味は下記参照)

 注・・志賀の故郷=大津京。今の滋賀県大津市に置
     かれた天智天皇の都。662年大和飛鳥から
     遷都、672年壬申(じんしん)の乱で焼亡。

作者・・藤原為家=ふじわらのためいえ。1198~1275。
    藤原定家は父、俊成は祖父。続後撰・続古今和
    歌集の撰者。

出典・・中院詠草(岩波書店「中世和歌集・鎌倉篇」)

参考歌です。

さざ浪や 志賀の都は 荒れにしを 昔ながらの
山桜かな
                 平忠度

(さざなみや しがのみやこは あれにしを むかし
 ながらの やまざくらかな)

意味・・志賀の古い都はすっかり荒廃してしまった
    けれど、昔のままに美しく咲き匂っている
    長等山の山桜だなあ。

    古い都を壬申(じんしん)の乱で滅んだ大津
    京に設定し、人間の営みははかないもので、
    壮麗を極めた大津の京も荒れ果ててしまって
    いるが、山桜は年々咲き誇って自然は昔のま
    まである、と感慨を華やかさと寂しさを込め
    表現している。
    
 注・・さざ浪=志賀の枕詞。
    ながら=接続詞「ながら」と「長等山」の
     掛詞。

作者・・平忠度=たいらのただのり。1144~1184。
    一の谷の戦いで戦死。

出典・・千載和歌集・66。

 
**************** 名歌鑑賞 ***************
 
 
神さぶる 荒津の崎に 寄する波 間なくや妹に
恋ひわたりなむ
                土師稲足

(かみさぶる あらつのさきに よするなみ まなくや
 いもに こいわたりなん)

意味・・この荒津の崎に神々しく絶える間もなく、寄せ
    ては砕ける波のように、これから長い旅の間、
    絶え間なく都に残して来た妻を恋しく思い続け
    ることだろう。

    遣新羅使(けんしらきし)が詠んだ歌です。

 注・・神さぶる=神々しい気分がある、厳(おごそ)か
     である。
    荒津の崎=博多湾に臨む福岡市西公園のあたり。
    間なく=絶え間がなく。

作者・・土師稲足=はにしのいなたり。生没年未詳。736
    年韓国の南部にあった新羅国に派遣された。

出典・・万葉集・3660。
 

 
*************** 名歌鑑賞 **************
 
 
冬ながら 空より花の 散りくるは 雲のあなたは
春にやあるらむ
                 清原深養父
            
(ふゆながら そらよりはなの ちりくるは くもの
 あなたは はるにやあるらん)

意味・・冬なのに空から花が降っているよ。そうすると、
    雲の向こうはもう春なのではなかろうか。

    雪が降り、待ち遠しい春であるが、気持ちだけ
    でも春の気配を味わった歌です。

 注・・冬ながら=冬でありながら。
    花=雪を花と見たもの。。

作者・・清原深養父=きよはらのふかやぶ。910年頃活躍
    した人。清少納言の曾祖父。

出典・・古今和歌集・330。

 
*************** 名歌鑑賞 ***************
 
 
冬枯れの 森の朽葉の 霜の上に 落ちたる月の
影の寒けさ 
                藤原清輔
             
(ふゆがれの もりのくちばの しものうえに おちたる
 つきの かげのさむけさ)

意味・・冬枯れの森の朽ち葉に置いた霜の上にさして
    いる月の光は寒々としている。

    蘇東披(そとうば)の「後赤壁腑(ごせきへきの
    ふ)」の詩の次の部分を念頭に詠んでいます。

    霜露(そうろ)既に降り、木の葉尽(ことごと)く
    脱す。人影地にあり、仰ぎて明月を見る。

    冷え冷えとした月を見て顧みると、明月のころ
    客が来て楽しんだものだ。この時酒が切れ肴も
    無くなったので探し求め、また飲んだものだ。
    だが今は、厳しい冬の寒さだ。

作者・・藤原清輔=ふじわらのきよすけ。1104~1177。
    正四位下。歌学に優れ当時の第一人者。歌学書
    「袋草子」家集に「清輔朝臣集」。

出典・・新古今和歌集・607。  
    

 
*************** 名歌鑑賞 ***************
 
 
世の中は 夢か現か 現とも 夢とも知らず 
ありてなければ               
              詠み人知らず

(よのなかは ゆめかうつつか うつつとも ゆめとも
 しらず ありてなければ)

意味・・この世の中は、いったい夢であろうか、それと
    も現実であろうか。世の中は現実であるか、夢
    であるか私には分らない。存在するようで、ま
    た存在しないのであるから。

    過去の苦しい思いは悪夢というように、過去の
    事はもう現在は実在しない、存在していたが今
    は夢という事もできる。
    嬉しいことは夢でなければ良いと思うし、失敗
    した時や身内の人を亡くした時は夢であって欲
    しいという気持がある。
    このような事を詠んだ歌です。

 注・・ありてなければ=現実に存在しながら、はかな
     く消え去るのでいっている。常住不変ではな
     いこと。諸行無常。

出典・・古今和歌集・942。
 

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