死はそこに 抗ひがたく 立つゆえに 生きている一日
一日はいづみ
上田三四二
(しはそこに あらがいがたく たつゆえに いきて
いるひとひ ひとひはいずみ)
意味・・病状を癌と知った時、死はすぐ目の前に避け
湧き出る命の泉として捉えている。
作者・・上田三四二=うえだみよじ。1923~1989。
京大医学部卒。医学博士。
出典・・歌集「湧井」(栗木京子著「短歌を楽しむ」)
死はそこに 抗ひがたく 立つゆえに 生きている一日
一日はいづみ
上田三四二
(しはそこに あらがいがたく たつゆえに いきて
いるひとひ ひとひはいずみ)
意味・・病状を癌と知った時、死はすぐ目の前に避け
湧き出る命の泉として捉えている。
作者・・上田三四二=うえだみよじ。1923~1989。
京大医学部卒。医学博士。
出典・・歌集「湧井」(栗木京子著「短歌を楽しむ」)
咲く花は 移ろふ時あり あしひきの 山菅の根し
長くはありけり
大伴家持
(さくはなは うつろうときあり あしひきの やま
すがのねし ながくはありけり)
意味・・はなやかに咲く花はいつか色褪(あ)せて散っ
ことへの意志がこもる。
作者・・大伴家持=おおとものやかもち。718~785。
大伴旅人の長男。少納言。万葉集の編纂をした。
出典・・万葉集・4484。
移りゆく 時見るごとに 心痛く 昔の人し
思ほゆるかも
大伴家持
(うつりゆく ときみるごとに こころいたく むかしの
ひとし おもおゆるかも)
意味・・次々と移り変わってゆく時世のありさまを
し=上接語を強調する。
作者・・大伴家持=おおとものやかもち。718~785。
大伴旅人の子。万葉集を編纂(へんさん)。
出典・・万葉集・4483。
老いてなほ 艶とよぶべき ものありや 花は始めも
終りもよろし
斉藤史
(おいてなお つやとよぶべ ものありや はなは
はじめも おわりもよろし)
意味・・年老いた身にも艶やかさはあるのでしょうか。
さに譬えています。
作者・・斉藤史=さいとうふみ。1909~2002。93歳。
小倉西高校卒。歌集「ひたくれない」。
出典・・歌集「秋天瑠璃」(栗木京子著「短歌を楽しむ」)
笹の葉に 降りつむ雪の うれを重み 本くたちゆく
わがさかりはも
読人知らず
(ささのはに ふりつむゆきの うれをおもみ もと
くたちゆく わがさかりはも)
意味・・葉に降り積もった雪のために、笹は先端が重く
はも=上接する語を強く引き立てる語。
出典・・古今和歌集・891。
月をこそ ながめなれしか 星の夜の 深きあはれを
こよひ知りぬる
建礼門院右京大夫
(つきをこそ ながめなれしか ほしのよの ふかき
あわれを こよいしりぬ)
意味・・いつも月ばかり眺め慣れていたのだが、星の
星の美しさの世界を発見した歌です。
作者・・建礼門院右京大夫=けんれいもんいんのうきょ
出典・・玉葉和歌集・2159。
梅が香に 昔をとへば 春の月 こたへぬ影ぞ
袖に映れる
藤原家隆
(うめがかに むかしをとえば はるのつき こたえぬかげぞ
そでにうつれる)
意味・・梅の香りに誘われて懐かしさのあまり昔のことを
袖=懐旧の涙で濡れた袖。
作者・・藤原家隆=ふじわらのいえたか。1158~1237。非
参議従二位。「新古今集」撰者の一人。
出典・・新古今和歌集・45。