名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2015年03月


**************** 名歌鑑賞 *****************


見わたせば 山もとかすむ 水無瀬川 夕べは秋と
なに思ひけむ       
                  後鳥羽院

(みわたせば やまもとかすむ みなせがわ ゆうべは
 あきと なにおもいけん)

意味・・見渡すと山の麓が霞み、そこを水無瀬川が流
    れている眺めは素晴らしい。夕べの趣は秋に
    限ると、どうして思っていたのであろうか。

 注・・山もと=山の麓。
    水無瀬川=大阪府三島郡を流れる川。淀川の
     支流。
    夕べは秋と=夕暮れの趣は秋が優れていると。

作者・・後鳥羽院=ごとばいん。1180~1239。82代
    天皇。鎌倉幕府打倒を企てたが、破れて隠岐
    に流された。

出典・・新古今和歌集・36。


*************** 名歌鑑賞 ****************


山たかみ 都の春を みわたせば ただひとむらの 
霞なりけり     
                大江正言

意味・・山が高いので、そこから都の春景色を眺望
    すると、ただ一群の春霞がたなびいている
    ばかりだ。

    八十メートルほどの高台にある長楽寺から
    春の都を眺めた景色です。霞を通して待ち
    に待った春が来た事を詠んでいます。

 注・・ひとむら=一群。ひとかたまり。

作者・・大江正言=おおえのまさとき。生没年未詳。
    従五位大隈守。

出典・・後拾遺和歌集・38。 


************** 名歌鑑賞 ****************


よくみれば 薺花さく 垣根かな
                             芭蕉

(よくみれば なずなはなさく かきねかな)

意味・・ふだんは気にも止めない垣根の根元に、よく見ると
    薺の花が目立たずひっそりと咲いている。

    程明道の詩句「万物静観皆自得」の気持を詠んで
    いると言われています。

    今ここを生きる薺の花は、咲いている場所や周囲の
    状況について好き嫌いを区別しないで自足自得して
    います。全ての人々があらゆる状況について好き嫌
    いを区別しないで自足自得することができれば、そ
    れは仏に他なりません。だから、今、ここを生きる
    人は憂悲苦悩を嫌いません。憂いに出会えば憂える
    仏、悲しみに出会えば悲しむ仏、苦しみに出会えば
    苦しむ仏、悩みに出会えば悩む仏になって何時も安
    らいだ心境でいられるのです。

    与えられた運命を嘆くのではなく、その運命の立場
    にいて幸せを求めて行こうという考えです。

 注・・自足自得=自分で必要を満たす、自分で満足する。

作者・・芭蕉=1644~1694。

出典・・小学館「日本古典文学全集・松尾芭蕉集」。


*************** 名歌鑑賞 ****************


春や疾き 花や遅きと 聞き分かん うぐひすだにも
鳴かずもあるかな
                 藤原言直
           
(はるやとき はなやおそきと ききわかん うぐいす
 だにも なかずもあるかな)

意味・・春が来たのに一向に春らしくないのは、春の
    来かたが早すぎたのか、花の咲くのが遅いの
    かと、聞いて判断しょうにも、その相手の鶯
    までも鳴きもしない。
    
     早春賦の思いです。

    春は名のみの 風の寒さや
    谷の鶯 歌は思えど
    時にあらずと 声も立てず
    時にあらずと 声も立てず

 注・・聞き分かん=聞き分ける、聞いて判断する。
    鳴かずもあるかな=「も」は強調の語。現在
     も「鳴かない」→「鳴きもしない」の言い
     方がある。

作者・・藤原言直=ふじわらのことなお。生没年未詳。
    900年頃活躍した人。

出典・・古今和歌集・10。


**************** 名歌鑑賞 ****************


はかなくて またや過ぎなん 来し方に かへるならひの
ある世なりとも         
                   兼好法師

(はかなくて またやすぎなん こしかたに かえる
 ならいの あるよなりとも)

意味・・過ぎてきた今までに再びかえる習わしが
    たとえこの世にあったとしても、やっぱ
    りまた、なんとなしにはかなく日々を過
    ごすであろうか。

    もし、生き返って来れたなら、今までと
    違った生き方をするのだろうか。

 注・・はかなく=たいしたこともない、むなしい。

作者・・兼好法師=けんこうほうし。吉田兼好。12
    83~1352。鎌倉時代から南北時代の歌人。
    著書「徒然草」。

出典・・岩波文庫「兼好法師家集」。

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