名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2015年07月


****************** 名歌鑑賞 ******************


はかなしや 命も人の 言の葉も たのまれぬ世を
たのむわかれは       
                兼好法師
 
(はかなしや いのちもひとの ことのはも たのまれぬ
 よを たのむわかれは)

意味・・はかないものだ。人の命も人の言葉も当て
    にならないこの世なのに、別れに際しての、
    再開を期する言葉を頼みにすることとは。

    退職するような時で、もう人との交際も期
    待出来ず、一人ぽっちの寂しい思いになっ
    ている時に、再会の別れの言葉に期待した
    時のような気持ちを詠んでいます。

 注・・たのむ=頼む。たよりにする、期待する。

作者・・兼好法師=けんこうほうし。1283~1350。
    出家前の名は吉田兼好。当代和歌の四天王。
   「徒然草」を書く。
 
出典・・岩波文庫「兼好法師家集・36」。


****************** 名歌鑑賞 ******************


手を折りて うち数ふれば 亡き人の 数へ難くも
なりにけるかな           
                  良寛

(てをおりて うちかぞうれば なきひとの かぞえ
 がたくも なりにけるかな)

意味・・手の指を折って数えてみると、亡くなった
    人の数が多くなって、数えることが出来な
    くなってしまったことだ。
 
    昔の職場のOB会に出ると、○○さんを知
    ってるやろう、亡くなったぞ・・。こんな
    話を 聞く事が多くなりました。
 
作者・・良寛=りょうかん。1758~1831。
 
出典・・谷川敏郎著「良寛全歌集」。
 


****************** 名歌鑑賞 *****************


よの常に 思ふわかれの 旅ならば こころ見えなる 
手向けせましや          
                 藤原長能

(よのつねに おもうわかれの たびならば こころ
 みえなる たむけせましや)

意味・・通り一遍に思う別れの旅であったなら、こんな
    心底見えすいた餞別をしましょうか、大切な人
    との別れと思いますので、粗品(狩衣と扇)なが
    ら再会を期して進呈しました。どうか寸志をお
    受け下さい。

    詞書は田舎に下る人に餞別として、狩衣と扇を
    贈る時に詠んだ歌となっています。当時は送別
    の時に、「狩衣と扇」を餞別として贈り「また
    帰って来て会いましょう」の気持を表わした。
    これが、かえって通りいっぺんの贈り物と取ら
    れそうなので、この歌を添えて贈ったものです。

 注・・よの常の=世間普通の。
    こころ見え=心が見え見え、心底見えすいた。
    手向け=餞別。
    せましや=「や」は反語の助詞、手向けしませ
    んものを。
    狩衣(かりぎぬ)=もと鷹狩の時に用いたが常服
     になった。「帰り来ぬ」の意が掛けられている。
    扇=「逢う」の意を掛けて、再び再会を期する。

作者・・藤原長能=ふじわらのながとう/ながよし。949~
    1009。伊賀守。中古三十六歌仙の一人。 
 
出典・・後拾遺和歌集。467。


******************* 名歌鑑賞 ******************


水の上に かづ書くよりも はかなきは おのが心を
頼むなりけり          
                   良寛

(みずのえに かずかくよりも はかなきは おのが
 こころに たのむなりけり)

意味・・水の上に数を書くことよりもはかないのは、
    自分の心をあてにすることである。

    自分の心を当てにするということの一例とし
    ては、相手の気持ちが自分の思うように変わ
    って欲しい、と思うなど。

    参考歌です。 
   「ゆく水に数書くよりもはかなきは思はぬ人を
    思ふなりけり」   (意味は下記参照)。

 注・・頼む=あてにする、期待する。

作者・・良寛=1758~1831。新潟県出雲町
     に左門泰雄の長子として生まれる。幼名
     は栄蔵。
 
出典・・谷川敏朗著「良寛全歌集」。

参考歌です。
ゆく水に 数書くよりも はかなきは おもはぬ人を
思ふなりけり 
                  在原業平

(ゆくみずに かずかくよりも はかなきは おもわぬ
 ひとを おもうなりけり)

意味・・流れる水に数を書いてもはかなく消えるもので
    ある。それよりももっとはかないのは、思って
    くれない人を思うということである。

作者・・在原業平=ありわらのなりひら。825~880。
    従四位・美濃守。

出典・・伊勢物語・50段。


****************** 名歌鑑賞 *****************


今こそあれ 我も昔は 男山 さかゆく時も 
ありこしものを
             詠人知らず
             
(いまこそあれ われもむかしは おとこやま さか
 ゆくときも ありこしものを)

意味・・今でこそこんなに衰えているが、私も昔は
    一人前の男で、栄えてゆく時があったのに。

    まだまだ負けるものかという気持ちもあり
    ます。

 注・・あれ=である。「衰える」を補って解釈す
     る。
    男山=京都市綴喜(つづき)郡にある山。
    「さかゆく」の枕詞。
    さかゆく=「坂行く」と「栄える」の掛詞。
    こし=「来し」と「越し」の掛詞。
 
出典・・古今和歌集・889。
 

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