名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2015年10月


**************** 名歌鑑賞 ****************


鳴き弱る 籬の虫も 止めがたき 秋の別れや 
かなしかるらむ
                紫式部

(なきよわる まがきのむしも とめがたき あきの
 わかれや かなしかるらん)
 
詞書・・その人、遠きところへ行くなり。秋の果つる
    日来たるあかつき、虫の声あはれなり。

意味・・垣根のキリギリスの鳴き声が弱まっている。
    それにつけても秋の別れを止めることは出来
    ないものだなあ。

    秋の虫の鳴き声が弱まって、秋も終わろうと
    している寂しさを詠んでいます。
    なお、題意により、仲の良い友が遠くに嫁ぎ、
    別れの寂しさも重ねています。

 注・・籬(まがき)=竹や柴で粗く編んだ垣根。
 
作者・・紫式部=むらさきしきぶ。970~1016。
 
出典・・家集「紫式部集」。
 
 


*************** 名歌鑑賞 *****************


 菊の香やならには古き仏達   
                    芭蕉

(きくのかや ならにはふるき ほとけたち)

意味・・昨日から古都奈良に来て、古い仏像を拝んで
    まわった。おりしも今日は重陽(ちょうよう)
    で、菊の節句日である。家々には菊が飾られ
    町は菊の香りに満ちている。奥床しい古都の
    奈良よ。慕(した)わしい古い仏達よ。

    重陽の日(菊の節句・陰暦9月9日)に奈良で詠
    んだ句です。菊の香と奈良の古仏の優雅さと
    上品さを詠んでいます。

作者・・松尾芭蕉=1644~1694。「奥の細道」、
   「笈(おい)の小文」など。
 
出典・・小学館「日本古典文学全集・松尾芭蕉集」。



******************* 名歌鑑賞 ******************


あしびきの 山田の案山子 汝さへも 穂拾ふ鳥を
守るてふものを
                  良寛

(あしびきの やまだのかかし なれさえも ほひろう
 とりを もるちょうものを)

意味・・狭い山間(やまあい)の田の案山子よ、お前までも穂を
    ついばむ鳥から稲を守るというのに、私は人々の役に
    立つ事が出来ないで情けないことだなあ。

    会社勤めも人々の役に立っています。

 注・・あしびき=山の枕詞。
    てふ=という。

作者・・良寛=りょうかん。1758~1831。

出典・・谷川敏朗著「良寛全歌集」。


**************** 名歌鑑賞 ****************


いかなれば 秋は光の まさるらむ 同じ三笠の 
山の端の月
                 永縁

(いかなれば あきはひかりの まさるらん おなじ
 みかさの やまのはのつき)

意味・・どういうわけで秋は月の光がまさるのだろうか。
    同じように見る三笠の山の端の月は。

    人は調子の良い時も悪い時もあるが、調子が悪
    い時でも沈まず、焼けにならず、頑張っていれ
    ば必ず報われ良くなるということを暗示してい
    ます。

 注・・三笠の山=奈良市にあり月の名所。「三」に
      「見る」を掛ける。
    山の端=山の上部の、空に接する部分。

作者・・永縁=えいえん。1048~1125。権僧正。

出典・・金葉和歌集・202。


**************** 名歌鑑賞 ****************


れれが身に故郷ふたつ秋の暮れ
                   吉分大魯
                  
(われがみに ふるさとふたつ あきのくれ)

前書・・国を辞して九年の春、都を出て一とせの秋。

意味・・故郷徳島を離れてすでに九年にもなり、その
    なつかしさは当然のことであるが、住み慣れ
    た京都を出て一年たった今となってみると、
    その京都へのなつかしさもひとしおのもので、
    秋の暮にしみじみと感慨にふけり、感じやすく
    なっている自分の心には、二つながらともに
    なつかしい故郷である。

 注・・秋の暮=秋の終わり、秋の夕べ。ここでは秋
     の夕べの意。

作者・・吉分大魯=よしわけたいろ。1730~1778。
    阿波国(徳島県)の藩士。俳諧を好み職を辞し
    て京都に上り蕪村に学ぶ。句集に「蘆陰(ろ
    いん)句選」
 
出典・・蘆陰句選(小学館「近世俳句俳文集」)

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