名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2015年11月


**************** 名歌鑑賞 **************


いかばかり しづのわが身を 思はねど 人よりも知る
秋の悲しさ              
                   散逸物語

(いかばかり しずのわがみを おもわねど ひとより
 もしる あきのかなしさ)

詞書・・秋の悲哀は、華やかに時めいている貴人の
    心には届かない、という心を。

意味・・わが身の卑しさをそれほども思わないけれ
    ども、人よりも秋の悲哀をいっそう感じて
    います。

    冬が近づいて寒さの準備もしなければなら
    ない。出来る人はいいのだが、出来ずに困
    り憂え苦しんでいる人がいる事を知って欲
    しい、という気持ちです。

     白楽天の詩、

    城柳(せいりゅう)宮槐(きゅうかい)漫(みだ)り
    がはしく揺落(ようらく)すれども 秋の悲しみ
    は貴人の心に至らず

    (都の町筋の柳、宮中の槐(えんじゅ)の木の葉
    たちは、秋風に吹き乱されて散り果ててしまっ
    たけれども、季節の愁い悲しみというものは、
    華やかに時めく貴人の心には感じないでありま
    しょう・・人々の愁い哀しみは感じないであり
    ましよう)

    この詩の心を詠んだ歌です。

 注・・しづ=賤。卑しい者。身分の低い者。
    がはしく=騒がしく、やかましく。

出典・・風葉和歌集・337。


*************** 名歌鑑賞 **************


逢ひみても あかぬ信太の 森の露 すえをや千枝に 
ちぎりをかまし       
                 招月正徹

(あいみても あかぬしのだの もりのつゆ すえおや
 ちえに ちぎりおかまし)

意味・・あの人といくら逢っても飽きることがない。
    信太の森の露が千枝の端々に置くように、
    将来を幾重にも約束して置きたいものだ。

    将来の約束を確実にしたい、という気持を
    詠んでいます。

 注・・信太の森=和泉国(大阪)の歌枕。
    すえ=枝の先端と将来の意を掛ける。
    千枝=千重を掛ける。
 
作者・・招月正徹=しょうげつせいてつ。1381~
    1459。室町中期の歌僧。
 
出典・・正徹詠草(岩波書店「中世和歌集・室町篇」)


**************** 名歌鑑賞 ***************


慰むる 心はなしに 雲隠り 鳴き行く鳥の 
音のみし泣かゆ       
              山上憶良

(なぐさむる こころはなしに くもがくり なきゆく
 とりの ねのみしなかゆ)

意味・・あれこれと思い悩んで気が晴れることもなく、
    雲に隠れて飛んで行く鳥が声高く鳴くように
    私も声をあげて泣きたくなって来る。

    「年老いた身に病気を加え、長年苦しみながら
    子供を思う歌」という題で詠まれたものです。

    この歌の前に状況を説明した長歌があります。
    この世に生きてある限りは無事平穏でありたい
    し、障害も不幸もなく過ごしたいのに、世の中
    の憂鬱で辛い事は、ひどい傷に塩を振り掛ける
    というように、ひどく重い馬荷に上荷をどっさ
    り重ね載せるように、老いたわが身の上に病魔
    まで背負わされている有様なので、昼は昼で嘆
    き暮らし、夜は夜でため息をついて明かし、年
    久しく病み続けたので、幾月も愚痴ったりうめ
    いたりして、いっそうのこと死んでしまいたい
    と思うけれど、真夏の蝿のように騒ぎ廻る子供
    たちを放ったらかして死ぬことも出来ず、じっ
    と子供を見つめていると、逆に生の思いが燃え
    立って来る。こうして、あれやこれやと思い悩
    んで、泣けて泣けて仕方がない。

作者・・山上憶良=やまのうえおくら。660~733。
    遣唐使として渡唐。

出典・・万葉集・898。


*************** 名歌鑑賞 ****************


いかばかり しづのわが身を 思はねど 人よりも知る
秋の悲しさ              
                   散逸物語・
                   道心すすむる君

(いかばかり しずのわがみを おもわねど ひとより
 もしる 秋のかなしさ)

詞書・・秋の悲哀は、華やかに時めいている貴人の
    心には届かない、という心を。

意味・・わが身の卑しさをそれほども思わないけれ
    ども、人よりも秋の悲哀をいっそう感じて
    います。
 
    白楽天の詩、
    城柳(せいりゅう)宮槐(きゅうかい)漫(みだ)り
    がはしく揺落(ようらく)すれども 秋の悲しみ
    は貴人の心に至らず
    (都の町筋の柳、宮中の槐(えんじゅ)の木の葉
    たちは、秋風に吹き乱されて散り果ててしまっ
    たけれども、季節の愁い悲しみというものは、
    華やかに時めく貴人の心には感じないでありま
    しょう・・人々の愁い哀しみは感じないであり
    ましよう)
    この詩の心を詠んだ歌です。

 注・・しづ=賤。卑しい者。身分の低い者。

作者・・道心すすむる君=散逸物語に出て来る主人公。

出典・・風葉和歌集・337。


*************** 名歌鑑賞 ***************


身に近く 来にけるものを 色変る 秋をばよそに
思ひしかども 
                 六条右大臣室

(みにちかく きにけるものを いろかわる あきをば
 よそに おもいしかども)

意味・・私の身辺に来ていたのに。草木の色変る
    秋を、かかわりのないものと思っていた
    けれども。

    男の飽き心に気づいて嘆き心を詠んでい
    ます。

    本歌は「身に近く秋や来ぬらむ見るまま
    に青葉の山もうつろひにけり」です。
         (意味は下記参照)

 注・・色変る=草木の色の変る秋。男の心変わ
     りを暗示。
    よそに=関係の無いものと。

作者・・六条右大臣室=ろくじょううだいじんの
    しつ。生没年未詳。源顕房(従一位右大臣)
    の妻。

出典・・新古今和歌集・1352。

本歌です。
身に近く 秋や来ぬらむ 見るままに 青葉の山も
うつろひにけり         
                  紫の上

意味・・身に近く秋が来たのでしょうか(私も飽かれ
    る時になったのかしら)。見ているうちに、
    青葉の山も紅葉に色変わりしてしまった。

    紫の上が光源氏の飽き心を嘆いた歌です。

出典・・源氏物語。 

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