名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2016年02月


*************** 名歌鑑賞 **************


隅々に残る寒さやうめの花
               与謝蕪村 

(すみずみに のこるさむさや うめのはな)

詞書・・すりこ木で重箱を洗ふごとくせよとは、政
    (まつりごと)の厳刻なるをいましめ給ふ。
    賢き御代の春にあふて。

意味・・春になって、梅が開花したとはいえ、冬の
    寒さが世間のあちらこちらに残っている。

    世間隈なく春なれかしと仁政を期する寓意
    句です。

 注・・すりこ木で重箱を洗ふ=大井利勝による戒
     めの言葉「丸き木にて角なる器の中をか
     きまわす如くにあれば事よき事なり。丸
     き器の内をまはす如く隅々まで探せば事
     の害出来候ぞ」による。

    賢き御代=新しい帝の治政。

作者・・与謝蕪村=よさぶそん。1716~1783。南宗
    画の大家。
 
出典・・蕪村全句集・126。
 


*************** 名歌鑑賞 *************

 
梅遠近 南すべく 北すべく
                  蕪村
               
(うめおちこち みんなみすべく きたすべく)

意味・・梅の開花の知らせが近隣からも遠方からも
    届いた。さて南の梅を見に行こうか、それ
    とも北へ行こうか。忙しい春になったぞ。

 注・・遠近(おちこち)=遠い所近い所、あちこち。

作者・・蕪村=ぶそん。1716~1783。与謝蕪村。
    南宗画でも大家。

 出典・・おうふう社「蕪村句全集」。


**************** 名歌鑑賞 *************** 


いつとても 身の憂き事は 変わらねど むかしは老ひを
嘆きやはせし
                   道因法師
             
(いつとても みのうきことは かわらねど むかしは
 おいを なげきやはせし)

意味・・若い頃からずっと、いつであっても身の憂さの
    嘆きは変りはしないが、それでも昔は老いの嘆
    きをしたことがあったであろうか。

    色々と悩みは尽きなかったけれども、その悩み
    の中で一番辛く思ったのは年老いたことである。

 注・・憂き=つらさ、不満。
    やは=反語の意味を表す。・・だろうか、いや・・
     ではない。
作者・・道因法師=どういんほうし。1090~1179頃。
    従五位左馬助。1172年出家。

出典・・千載和歌集・1080。


**************** 名歌鑑賞 ****************

 
木々の心 花ちかからし 昨日けふ 世はうすぐもり
春雨ぞ降る
                 永福門院 

(きぎのこころ はなちかからし きのうきよう よはうす
 ぐもり はるさめぞふる)

意味・・木々はその心の中で、もうすぐ花を咲かせようと
    思っているらしい。そんな昨日今日、世はうす曇
    り、花を咲かせる春雨が静かに降っている。

    春に会って雨を受け、生き生きとした木々。そこ
    から今にも花を咲かせたい、という生命力を感じ
    とっています。

作者・・永福門院=えいふくもんいん。1271~1342。伏見
     天皇の中宮。「玉葉和歌集」の代表的歌人。
 
出典・・玉葉和歌集。


**************** 名歌鑑賞 ***************

 
内日さす 都のてぶり 東山 寝たる容儀に 
いひつくしけり
              橘曙覧

(うちひさす みやこのてぶり ひがしやま ねたる
 すがたに いいつくしけり)

意味・・京都を代表した東山の姿を、布団を掛けて寝て
    いる姿だと上手く言ったものだ。そういえば、
    京都は安らかで落ち着いた雰囲気のある町だ。

    次の嵐雪の俳句を見て詠んだ歌です。

    蒲団着て 寝たる姿や 東山  
         (意味は下記参照)

 注・・内日=都の枕詞。
    てぶり=風俗、風習。
    容儀(すがた)=礼儀正しい態度や姿。

作者・・橘曙覧 =たちばなあけみ。1812~1816。家業
    は紙商だか、異母弟に譲り隠棲した。福井藩の
    重臣と親交。

出典・・岩波文庫「橘曙覧全歌集」。

参考句です。

蒲団着て 寝たる姿や 東山      
                嵐雪

(ふとんきて ねたるすがたや ひがしやま)

意味・・夕暮れどきに京の街から冬の東山を眺めると、
    冬には「山眠る」というけれどもその通り、
    人が蒲団をかぶって寝た姿である。

作者・・嵐雪=らんせつ。服部嵐雪。1654~1701。
    芭蕉に入門。

出典・・笠間書院「俳句の解釈と鑑賞事典」。


*************** 名歌鑑賞 **************


老いぬとて 松は緑ぞ まさりける わが黒髪の
雪の寒さに
                 菅原道真
             
(おいぬとて まつはみどりぞ まさりける わが
 くろかみの ゆきのさむさに)

意味・・老いてしまってでも松はますます緑を深く
    していることだ。私は、自分の黒髪が雪の
    ように白くなって、寒々とした思いでいる
    のに。

 注・・わが黒髪の雪の寒さに=自分の黒髪が、嘆
     きの為に雪のように白髪に変り、寒々と
     した思いでいるのに。

作者・・菅原道真=すがわらのみちざね。845~903。
    正一位太政大臣。藤原時平の讒言(ざんげん)
    で太宰権師(だざいごんのそち)に左遷され、
    大宰府に配流された。配所で2年後に没する。
    当代随一の漢学者。
 
出典・・新古今和歌集・1694。
 


**************** 名歌鑑賞 ****************

 
わが宿は 越の白山 冬ごもり 行き来の人の
跡かたもなし
                良寛
              
(わがやどは こしのしらやま ふゆごもり ゆききの
 ひとの あとかたもなし)

意味・・私の家は、越後の白い雪に覆われた山の所にあって、
    冬の間は中に閉じこもってしまう。そのため、行き
    来の人はもちろん、足跡も見られないことだ。
 
    雪が降り積もった厳しさを詠んでいます。

 注・・越(こし)=越後。福井・石川・富山・新潟。

作者・・良寛=りょうかん。1758~1831。新潟県出雲崎町
    で生まれた。
 
出典・・良寛全歌集。


**************** 名歌鑑賞 ****************

 
いのちなき 砂のかなしさよ さらさらと 握れば指の
あひだより落つ     
                    石川啄木
              
(いのちなき すなのかなしさよ さらさらと にぎれば
 ゆびの あいだよりおつ)

意味・・しっかりと掴(つか)まえていないと砂は
    指の間からさらさらと落ちる。悲しい事
    に、それが命のない砂というものだ。

    主体性のない砂のように、社会の流れに
    押し流されるこの自分の悲しさよ。
    掴まえた幸福も、気を緩めると砂と同じ
    ように逃げていく。

作者・・石川啄木=いしかわたくぼく1886~1912。
    26歳。盛岡尋常中学校を中退後上京。「一
    握の砂」「悲しき玩具」などの歌集を刊行。
 
出典・・ 一握の砂。


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最上川 瀬々の岩波 せきとめよ よらでぞ通る 
白糸の滝
                詠み人知らず

(もがみがわ せぜのいわなみ せきとめよ よらでぞ
 とおる しらいとのたき)

意味・・最上川よ、瀬々の岩波をせきとめてくれまいか。
    流れの速さに、いま、私はあの白糸の滝へは寄
    らないで通っていますよ。せっかく白糸を撚(よ)
    るような、滝だったのに。

    川下りをしている時に白糸のような滝を見つけ
    て詠んだ歌です。

 注・・瀬々=多くの瀬、あの瀬この瀬。瀬は流れの急
     な所。
 
出典・・義経記。
   


***************** 名歌鑑賞 ****************


住江の 岸の姫松 人ならば いく世か経しと
言はましものを
              詠人知らず

(すみのえの きしのひめまつ ひとならば いくよか
 へしと いわましものを)

意味・・住江の海岸の老松が人間であったならば、いった
    いお前は何年ぐらいたった木なのかと尋ねてみた
    いものだ。
 
    松の大木を見て感動したものです。

 注・・住江の岸=大阪住吉付近の海岸。
    姫松=本来は小松の意だが、ここでは老松の愛称。
 
出典・・古今和歌集・906。

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