名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2016年03月


****************** 名歌鑑賞 ***************** 


なんのその 面の厚いが 芸の先
                      
      
(なんのその つらのあついが げいのおも)

意味・・人前でする諸芸に成功するかしないかは、ものおじ
    しない心。面の厚さで決まる。誰でも間違うことは
    あるし、調子の出ない時もある。失敗もご愛嬌と、
    のんでかかる心の張りが必須の前提だから、堂々と
    やれという事。

 注・・面の厚い=面の皮が厚い、厚かましくて恥をしらぬ
     事、ずうずうしい。
    先(おも)=主。第一の条件・資格。

出典・・もみぢ笠。


**************** 名歌鑑賞 **************

 
いにしへに 変らざりけり 山ざくら 花は我をば
いかが見るらむ
                  藤原基長
            
(いにしえに かわらざりけり やまざくら はなは
 われをば いかがみるらん)

意味・・過ぎた昔と変わらないことだ、山桜は。その
    変わらぬ花は様変わりした私をどう見るのだ
    ろうか。

    出家してかってとは異なった姿の自分を見て、
    不変の桜と無常の人間を対照して述懐して詠
    んだ歌です。

 注・・我=出家して以前と異なった姿の自分。
    無常=いつも変化していること。

作者・・藤原基長=ふじわらのもとなが。1043~1107。
    正二位権中納言。 1098年出家。
 
出典・・千載和歌集・1055。


***************** 名歌鑑賞 ****************

 
憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは
祈らぬものを          
                  源俊頼

(うかりける ひとをはつせの やまおろしよ はげしけれ
 とは いのらぬものを)

意味・・つれなかった人をどうか私になびかせてくださいと
    初瀬の観音に祈ったのだが。初瀬山から吹き降ろす
    山風が激しく吹きすさぶように、ますます薄情にな
    れとは祈らなかったのに。

    ままならぬ恋を詠んだ歌です。
    つれない相手の心がなびくように初瀬の観音に祈った。
    しかし、その思いは通じるどころか、相手はいよいよ
    冷たくあたるようになったというのです。

 注・・憂かり=まわりの状況が思うにまかせず、気持ちふさ
     いでいやになること。
    初瀬=奈良県にある地名。長谷寺の11面観音がある。
    やまおろし=山から吹きおろす冷たく激しい風。

作者・・源俊頼=みなもととしより。1055~ 1129。金葉和歌
    集の撰者。

出典・・千載和歌集・1154。百人一首・74。


**************** 名歌鑑賞 **************

 
春くれば 散りにし花も さきにけり あはれ別れの
かからましかば
                  具平親王
            
(はるくれば ちりにしはなも さきにけり あわれ
 わかれの かからましかば)

意味・・春が巡って来たので去年散った花も咲いたこと
    ですね。ああ、人との別れがこのようであった
    なら嘆くこともないでしょうに。

    桜狩に行った時に、昨年亡くなった人の話題と
    なり、詠んだ歌です。

 注・・あはれ=感動を表す語。ああ、なんとまあ。
    かからましかば=斯からましかば。もしこの
     ようであったならば。

作者・・具平親王=ともひらしんのう。964~1009。中
    務卿・正四位上。村上天皇弟7皇子。
 
出典・・千載和歌集・545。


*************** 名歌鑑賞 ***************

 
心ありて もるとなけれど 小山田の いたづらならぬ
かかしなりけり
                  仏国法師
 
(こころありて もるとなけれど おやまだの いたずら
 ならぬ かかしなりけり)
 
意味・・山間の小さな田に、心があってその田を守って
    いるわけではない案山子であるが、決して無益
    でなく、無駄ではないのだ。
 
    案山子は蓑や笠を付け弓矢を持って、何も思わ
    ずただ立っているだけで、無駄のように見られ
    るが、それなりに鳥や獣を追い払うという役目
    を果たして いる。
 
    心はそのどこにも囚われず、無心になってい
    る案山子のようになりたいと詠んだ歌です。
    胸の中を空っぽにして執着心のない心にして
    おくことが大切である、と。
    私たちはいつも何かが心に引っ掛かっている。
    大したことではなく、他人から見れば何でもな
    いことが、その人にとっては大きく胸に残る。
    そしてそのことで苦しむことがある。
    例えば人から注意されると不愉快さが後まで残
    ることがある。    
    どんなことでも胸にとどめない、執着しないこ
    とが大切であるのだが、難しいものである。
 
 注・・いたづら=役に立たない、無益だ。
 
作者・・仏国法師=1241~1316。後嵯峨天皇の皇子。
    臨済宗の僧。
 
出典・・不動智神抄録(鎌田茂雄著「心と身体の鍛錬法」)

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