名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2016年03月


**************** 名歌鑑賞 ****************


めせやめせ ゆふげの妻木 はやくめせ 帰るさ遠し 
大原の里
                   香川景樹
              
(めせやめせ ゆうげのつまぎ はやくめせ かえるさ
 とおし おおはらのさと)

意味・・さあ、お買い下さい、お買い下さい。夕飯を炊く
    薪をはやくお買い下さい。私の帰って行く所は道
    遠い大原の里です。

    洛北(京都の北)から妻木を売りに来る大原女は
    古くから有名です。

 注・・妻木=つまき、薪のこと。

作者・・香川影樹=かがわかげき。1768~1843。小沢蘆
    庵と親しく、又賀茂真淵と歌論で対立。
 
出典・・家集「桂園一枝  」(笠間書院「和歌の解釈と鑑賞
    辞典」)


*************** 名歌鑑賞 *************


はたなかの かれたるしばに たつひとの うごくともなし
ものもふらしも
                    会津八一
 
(畑なかの 枯れたる芝に 立つ人の 動くともなし
 もの思ふらしも)

詞書・・平城宮址の大極殿芝にて。

意味・・畑の中の枯れた大極殿址の芝に立つ人は
    動こうともせずじっと佇んでいるが、け
    だし物思いに耽っているのであろう。

    奈良時代の大極殿の址が、今見ると「畑
    なかの枯れた草」であることに、感慨を
    催して詠んだ歌です。

 注・・平城宮・大極殿=今の奈良県生駒郡に710
     年頃造営され、784年長岡京に遷都され
     るまで70年間、奈良の都として繁栄した。
    大極殿芝=大極殿址の土壇に生えている草。

作者・・会津八一=あいづやいち。1881~1956。
    早大文科卒。文学博士。美術史研究家。歌
    集「鹿鳴集」「南京新唱」。
 
出典・・歌集「南京新唱」。
  


**************** 名歌鑑賞 **************


踏み分けし 昨日の庭の跡もなく また降り隠す 
今朝の白雪
                日野俊光
              
(ふみわけし きのうのにわのあともなく またふり
 かくす けさのしらゆき)

意味・・踏み分けた昨日の庭の雪に、その足跡もなくして
    しまうように、また降り隠す今朝の白雪よ。

    足跡のない庭の雪を美しいと詠んだ歌です。

作者・・日野俊光=ひののとしみつ。12360~1326。正二
    位権大納言。鎌倉期の歌人。
 
出典・・玉葉和歌集・961。


*************** 名歌鑑賞 ************** 


物として はかりがたしな 弱き水に 重き舟しも
浮かぶと思へば
                  京極兼為
             
(ものとして はかりがたしな よわきみずに おもき
 ふねしも うかぶとおもえば)

意味・・物というものは量りがたいものである。力の無い
    水に重い舟が浮かぶことを思うと。

    「表面的な形だけでは物事の本性は量りがたい」
    ということで、「荀子」の次の言葉によってい
    ます。
    「君者舟也、庶人者水也、水則載舟、水則覆舟」
    により(意味は下記参照)、舟と水との相関関係を
    通して、外見の強弱・軽重でなく、物それぞれの
    本性とその相互の微妙な均衡によって宇宙の調和
    が保たれているという真理を歌っています。
    舟と水ー君と臣ー伏見院と兼為、と連想し、軽い
    臣(兼為)が重い君(伏見院)を支えてきた自負、舟
    も水を信じて歌壇、政界に正しい道を求めてきた
    相互の均衡への感動を詠んでいます。

 注・・伏見院=1265~1317。弟2代天皇。鎌倉期の歌人。

作者・・京極兼為=きょうごくのかねため。1254~1332。
    伏見院の近臣として活躍するが、排斥を受け土佐に
    流された。鎌倉期の歌人。玉葉和歌集の選者。

出典・・風雅和歌集・1727。

荀子の言葉です。

「君者舟也、庶人者水也、水則載舟、水則覆舟」

君なる者は舟なり、庶人(しょじん)なる者は水なり、水は
則(すなわち)舟を載せ、水は則(すなわち)舟を覆(くつがえ)
す。

たとえば君主は舟であり、民衆は水である。水は舟を浮かべ
もするし、転覆させもするのである。民衆が政治を不満とし
て騒ぐ時には、君主は安穏とその地位にいることなど出来な
い。


**************** 名歌鑑賞 ***************


とにかくに 物は思はず 飛騨匠 うつ墨なはの
ただ一筋に           
                柿本人麿

(とにかくに ものはおもわず ひだたくみ うつすみ
 なわの ただひとすじに)

意味・・とにかく他の事は思わないで、飛騨の匠が
    打つ墨縄の筋が一直線であるごとく、ただ
    一筋にあの人のことを思おう。

 注・・墨なは=墨縄。墨つぼと麻糸と錐からなる
     大工道具で木材・石の表面に線をつける
     のに使う。

作者・・柿本人麿=かきもとのひとまろ。生没年未
    詳。山部赤人と並ぶ万葉歌人。

 出典・・拾遺和歌集・990。 
 


**************** 名歌鑑賞 *************** 


紀の国や 由良の湊に 拾ふてふ たまさかにだに 
あひ見てしがな          
                藤原長方

(きのくにや ゆらのみなとに ひろうちょう たまさか
 にだに あいみてしがな)

意味・・紀の国の由良の湊で拾うという美しい玉、その
    たまにでもいいから逢いたいものだなあ。

 注・・紀の国=和歌山県。
    てふ=「といふ」の縮まった形。
    たまさか=「玉」と「たまに」を掛ける。
    玉=美しい小石や貝殻。真珠。
 
作者・・藤原長方=ふじわらながかた。1138~1191。
    従二位権中納言。藤原定家の従弟にあたる。
 
出典・・新古今和歌集・1075。


**************** 名歌鑑賞 *************** 


紀の国や 由良の湊に 拾ふてふ たまさかにだに 
あひ見てしがな          
                藤原長方

(きのくにや ゆらのみなとに ひろうちょう たまさか
 にだに あいみてしがな)

意味・・紀の国の由良の湊で拾うという美しい玉、その
    たまにでもいいから逢いたいものだなあ。

 注・・紀の国=和歌山県。
    てふ=「といふ」の縮まった形。
    たまさか=「玉」と「たまに」を掛ける。
    玉=美しい小石や貝殻。真珠。
 
作者・・藤原長方=ふじわらながかた。1138~1191。
    従二位権中納言。藤原定家の従弟にあたる。
 
出典・・新古今和歌集・1075。


****************** 名歌鑑賞 ****************


このもだえ 行きて夕べの あら海の うしほに語り
やがて帰らじ
                  山川登美子
             
(このもだえ ゆきてゆうべの あらうみの うしおに
 かたり やがてかえらじ)

意味・・この悶えている気持ちを訴えるために夕方、海辺に
    行き、荒れた海の潮に向かって語り、そのまま私は
    この世に帰るまい。

    悶え苦しんでいる今の私の気持ちを人に言うに言え
    ない。そうは言ってもこのまま胸にしまっておけな
    い程に苦しい。そこで荒れ狂った海に向かって、思
    い切り辛い心の内を皆吐き出してしまったならいつ
    死んでもよい。
    
 注・・もだえ=悶え。思い悩み苦しむ。

作者・・山川登美子=やまかわとみこ。1879~1909。29歳。
    与謝野鉄幹創刊の「明星」の社友。共著「恋衣」。
 
出典・・歌集「恋衣」。


************** 名歌鑑賞 **************

 
ますらをと 思へる我や 水茎の 水城の上に
涙拭はむ       
                大伴旅人

(ますらおと おもえるわれや みずぐきの みずきの
うえに なみだのごわむ)

意味・・知識もあり、武勇も備わった立派な男子
    だと自認していたこの私が、多年住み馴
    れた筑紫(つくし)を後に、親しんだ方々
    とも別れて帰郷する悲しさに、水城の上
    に立って不覚にも涙を流すのである。

    大伴旅人が筑紫から京に帰るとき、娘子
    らと別れる時に、「別れの易(やす)き事
    を傷みその会ひの難きことを嘆き」涙を
    拭きながら詠んだ歌です。

 注・・水茎(みずくき)の=山城の枕詞。
    水城(みずき)=外敵の進入を防ぐため、
     堤を築いて水をたたえた城郭。
    拭(のご)はむ=手でふき取る。

作者・・大伴旅人=おおとものたびと。665~731。
    大納言・従二位。
 
出典・・万葉集・968。


************** 名歌鑑賞 ***************

 
あるはなく なきは数添ふ 世の中に あはれいづれの
日まで嘆かん       
                  小野小町

(あるはなく なきはかずそう よのなかに あわれ
 いずれの ひまでなげかん)

意味・・生きていた人はもはやこの世になく、亡く
    なる人は数を増やす無常なこの世で、ああ、
    私もいつの日まで命のはかなさを嘆くので
    あろうか。

    人が次々に死んでゆく世の無常を悲しんで
    いて、ふとその無常の迫っている我が身を
    顧みて、感慨にふけっています。

 注・・ある=生きている人。
    なき=亡き。死んだ人。
        添ふ=付け加える、多くなる。
    あはれ=ああ。感動詞。

作者・・小野小町=おののこまち。生没年未詳。三
    十六歌仙の一人。

出典・・新古今和歌集・850。

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