名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2016年04月


***************** 名歌鑑賞 *************

 
山路来て 何やらゆかし すみれ草
                    芭蕉
                    
(やまじきて なにやらゆかし すみれぐさ)

意味・・山路を越えて来て、ふと道のほとりにすみれが
    咲いているのに気がついた。こんな山路で思い
    がけなく見つけたすみれのなんとゆかしく、心
    がひかれることだ。

 注・・ゆかし=情趣や品位に何となく気がひかれる様。
     おくゆかしい、何となくしたわしい。
    すみれ草=その姿形、花の色合いが、とりわけ
     可憐さを感じさせる。

作者・・芭蕉=ばしょう。1644~1694。
 
出典・・野ざらし紀行。


**************** 名歌鑑賞 *****************


たまきはる 宇智の大野に 馬並めて 朝踏ますらむ 
その草深野            
                  中皇命
 
(たまきわる うちのおおのに うまなめて あさふますらん
 そのくさふかの)

意味・・今頃は、宇智の大野に馬を並べて朝の狩りをしている
    だろう。その草の生い茂った野で。
    
    この歌の前に詠まれた長歌によると、
    朝に夕に手に取って撫(な)でていた愛用の梓弓。
    その梓弓を持って狩りに出かけた。今頃は朝の狩
    りを始めているだろう、矢を放つ音が聞こえるよ
    うだ、と想像して詠んだ歌です。

 注・・たまきはる=宇智の枕詞。
    宇智=奈良県五条市。
    踏ます=獲物を追い立てる。

 作者・・中皇命=なかつすめらみこと。舒明天皇の皇女。

出典・・万葉集・4。 
 


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鵜飼舟 高瀬さし越す ほどなれや むすぼほれゆく 
篝火の影
                 寂蓮法師

(うがいぶね たかせさしこす ほどなれや むすぼおれゆく
 かがりびのかげ)

意味・・鵜飼舟が川の浅瀬を棹さして越えるところだから
    だろうか。揺れもつれていく篝火の光よ。

    歌は写生的であるが、逆境時の試練と見ると、一
    種のしみじみとした人生的な味わいがあります。

 注・・鵜飼舟=鵜飼のための舟で篝火(かがりび)を焚く。
    高瀬=川の浅瀬。
    むすぼほれゆく=揺れもつれゆく。
    篝火=篝籠(かがりかご)とよばれている鉄製の籠
     で燃やす火。
 
作者・・寂蓮法師=じゃくれんほうし。1139~1202。新
    古今和歌集の撰者になったが途中で没した。
 
出典・・新古今和歌集・252。


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更くる夜を をいとまたまはぬ 君わびず 隅にしのびて
鼓緒しめぬ
                    与謝野晶子
              
(ふくるよを おいとまたまわぬ きみわびず すみに
 しのびて つづみおしめぬ)

意味・・更けてゆく夜、お暇をいただけないあなた(舞妓)は
    辛い様子も見せず、部屋の隅っこでこっそり鼓を打
    つ準備をして鼓の緒をしめている。

    夜更けになっても未だ開放されず、鼓をうたねばな
    らない舞妓の境遇を歌っており、客の意に逆らえな
    い舞妓が不平も言わず、愚痴もこぼさない、そのけ
    なげさを詠んでいます。

 注・・君=結句から舞妓をさす。
    わびず=辛くない。
    鼓緒しめぬ=鼓を打つ準備をすること。

作者・・与謝野晶子=よさのあきこ。1878~1942。堺女学
    校卒。与謝野鉄幹と結婚。「みだれ髪」「舞姫」。
 
出典・・歌集「曙染」。


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七重八重 花は咲けども 山吹の みのひとつだに 
なきぞあやしき       
                兼明親王
            
(ななえやえ はなはさけども やまぶきの みのひとつだに
 なきぞあやしき)

意味・・山吹は七重八重と花は咲くけれど、実が一つも無い
    のが不思議だが、その山吹と同じように我が家にも
    蓑一つさえないのです。

    雨の降る日、蓑を借りる人がいたので山吹の枝を
    与えたところ、その意味が分からないと言ったので
    この歌を詠んで贈ったものです。

    贈られた人は太田道灌で、蓑を借りようとして山吹
    の枝を差し出されたが、意味がわからなかったのを
    恥じ、発奮して和歌を学んだという逸話があります。

 注・・みの=「実の」と「蓑」を掛ける。
    あやしき=不思議だ。神秘的だ。

作者・・兼明親王=かねあきらしんのう。914~987。醍醐天
    皇第16皇子。左大臣。

出典・・後拾遺和歌集・1154。

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